ホウ酸塩(読み)ホウサンエン

化学辞典 第2版 「ホウ酸塩」の解説

ホウ酸塩
ホウサンエン
borate

ホウ素オキソ酸であるホウ酸の塩.ホウ素のオキソ酸はオルトホウ酸([別用語参照]ホウ酸)以外に多くのポリ酸,Bの見掛けの酸化数の異なるものもあり,非常に範囲が広い.したがって,正確な名称と構造の対比は困難であるが,従来,慣用名として,各固体塩のオリゴマー陰イオン中のBの数nで,ポリマーも含めてnホウ酸塩としてきた.【】オルトホウ酸塩:平面正三角形型の [BO3]3- を含む塩である.Na3BO3は,Na3B3O6またはB2O3とNa2CO3との混合物を680 ℃ 以上に加熱すると得られる.M = Mg,Ca,Cd,Coなどの塩もB2O3と各金属の酸化物の溶融などで得られる.Mg3(BO3)2は小藤石(kotoite)とよばれる鉱石天然に産出する.[B(OH)4] を含む塩(テトラヒドロキソホウ酸塩)も知られている.メタホウ酸ナトリウム・二水和物NaBO2・2H2O[CAS 16800-11-6]は,構造上はNa[B(OH)4]である.【】ポリホウ酸塩:
(1)二ホウ酸塩;旧名,ピロホウ酸塩.2個の平面三角形型のBO3がO原子1個を共有して結合した構造の [B2O5]4- を含む塩である.Mg塩;Mg2(B2O5)は遂安石(suanite)[CAS 36564-04-2]として産出する.
(2)三ホウ酸塩;平面六角形型構造のB3O3リングをもつ三ホウ酸陰イオンには [B3O3(OH)4](図(a)),[B3O3(OH)5]2-(図(b))と鎖状の [B3O4(OH)3]n2n がある.LiB3O5無水塩はリング外側の4個のOHから2個の水分子が抜けた形で,溶融塩から結晶として得られ,非線形光学素子として使用される.Zn[B3O3(OH)5]・H2O[CAS 12429-73-1]はB3O3リングが鎖状につながっている.

(3)四ホウ酸塩組成式に [B4O7]2- を含むもので,四ホウ酸ナトリウム・十水和物Na2[B4O7]・10H2O[CAS 1303-96-4],四ホウ酸カリウム・四水和物K2[B4O7]・4H2O[CAS 12045-78-2]などがある.ただし,[B4O7]2- は存在せず,構造上(図(c))は,Na2[B4O5(OH)4]・8H2Oで,正しい水和水数,OH基の数に対応している.
(4)五・六ホウ酸塩;組成式にM B5O8のように [B5O8] を含む五ホウ酸塩は,構造上(図(d))はNa[B5O6(OH)4]・3H2O[CAS 12046-75-2],K[B5O6(OH)4]・2H2O[CAS 12229-13-9]などが相当する.六ホウ酸塩もMg2B6O11・15H2O鉱物インデライト(inderite)[CAS 12260-26-3]として天然に存在する.構造上はMg2[B6O7(OH)6]とされる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホウ酸塩」の意味・わかりやすい解説

ホウ酸塩
ほうさんえん
borate

ホウ酸と塩基中和によって生成する塩。オルトホウ酸塩MI3BO3、二ホウ酸塩MI4B2O5、メタホウ酸塩MIBO2、四ホウ酸塩MI2B4O7などが知られている。酸化ホウ素と金属酸化物とを溶融するか、ホウ酸またはその塩の水溶液から複分解でつくる。たとえば、オルトホウ酸塩にMg3(BO3)2(小藤(ことう)石)がありBO33-イオンが存在する。二ホウ酸塩にはMg2B2O5(遂安(すいあん)石)がありB2O54-イオンが存在する。メタホウ酸塩には、環状のB3O63-イオンを含むNaBO2と、鎖状の(BO2-)∞イオンを含むCa(BO2)2がある。四ホウ酸塩ではNa2B4O7・10H2O(ホウ砂(しゃ))が有名で、[B4O5(OH)4]2-イオンが存在する。アルカリ金属塩は無色、水に可溶

[守永健一・中原勝儼]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のホウ酸塩の言及

【ホウ素化学(硼素化学)】より

…ホウ素の化合物のうち最も重要なものは酸素との化合物である。ホウ酸B(OH)3はホウ酸塩からハロゲン化ホウ素の加水分解によって得られ, B(OH)3+H2O  ―→B(OH)4+H (pK=9.0)のようなきわめて弱い酸である。B(OH)3の構造は,Bを中心にした正三角形で,それが水素結合によってつながった無限層状構造となっている。…

※「ホウ酸塩」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android