ホルネル症候群(読み)ホルネルしょうこうぐん(その他表記)Horner syndrome

六訂版 家庭医学大全科 「ホルネル症候群」の解説

ホルネル症候群
ホルネルしょうこうぐん
Horner syndrome
(眼の病気)

どんな病気か

 眼交感神経の異常により瞳孔不同眼瞼下垂(がんけんかすい)発汗障害などが起きる状態です。

原因は何か

 脊髄空洞症(せきずいくうどうしょう)胸部腫瘍(しゅよう)や手術侵襲、内頸動脈解離や海綿静脈洞(かいめんじょうみゃくとう)病変などが原因になることがあります。

症状の現れ方

 瞳孔散大筋麻痺により、患眼は散瞳しにくくなるため、暗所で瞳孔不同が顕著になります(患眼が縮瞳)。上下の眼瞼を開くはたらきの瞼板筋(けんばんきん)(ミュラー筋)も同じく眼交感神経の支配を受けているため、軽度の眼瞼下垂瞼裂(けんれつ)狭小を伴います(図59)。

 また交感神経は発汗を促すため、障害部位により顔面、首、半身の発汗障害を起こすことがあります。

検査と診断

 両眼の瞳孔径を明所と暗所で観察し、暗所で瞳孔不同が著明になることを確認します。その他、コカインチラミン・低濃度エピネフリンなどの点眼試験を行い、各点眼薬に対する瞳孔の反応を調べることで、診断と障害部位の判定を行います。そのうえで、必要に応じてMRI等の画像検査を行い、原疾患を調べます。

治療の方法

 原疾患を検索し、原疾患の治療を行うことが大切です。とくに小児の場合は腫瘍など重篤な疾患を背景に発症することが多いため注意が必要です。また頸部(けいぶ)外傷後に疼痛(とうつう)を伴って発症する場合は内頸動脈解離が原因の可能性があり、緊急な対応が必要です。


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改訂新版 世界大百科事典 「ホルネル症候群」の意味・わかりやすい解説

ホルネル症候群 (ホルネルしょうこうぐん)
Horner's syndrome

顔面を支配する交感神経系の障害により生じ,瞳孔縮小眼瞼裂狭小,眼球陥凹主徴とする症候群。そのほか患側の顔面の発汗障害などがみられることもある。1852年C.ベルナールによって動物で発見され,69年スイスの眼科医ホルナーJohann F.Horner(1831-86)によってヒトにおける臨床所見の発表が行われた。顔面を支配する交感神経は,中枢である視床下部から出て脳幹脊髄を下降し,第八頸髄から第二胸髄に存在する脊髄毛様中枢に達する。そこで繊維をかえて脊髄を出て上頸部交感神経節に至り,さらに繊維をかえて内頸動脈に沿って頭蓋内に入り末梢器官に分布する。この経路のどこかが障害されると,この症候群を発症する。たとえば脳幹から上部脊髄にかけての血管障害,腫瘍,空洞症など,上胸部から頸部へかけての外傷や腫瘍,頭蓋底部のさまざまな疾患などが原因となる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ホルネル症候群」の意味・わかりやすい解説

ホルネル症候群
ホルネルしょうこうぐん
Horner's syndrome

J.ホルネル (1831~86) により 1869年に発見された症候群。 C.ベルナールによって 52年動物に,ホルネルによってヒトに発見されたもので,ベルナール=ホルネル症候群ともいう。瞳孔散大筋の麻痺による瞳孔の縮小,瞼板筋の麻痺による眼瞼裂の狭小 (上まぶたの下垂と下まぶたのわずかな上昇) ,眼窩内ミューラ筋の麻痺による眼球の陥没 (後退。これは眼瞼裂の狭小による見かけの上のもの) を主症状とする。原因は甲状腺腫,動脈瘤,肺尖部結核,頸部外傷などによって眼球の諸組織を支配する交感神経が麻痺したことで,眼の症状のほかに,ほおの発赤や汗の減少などを伴う。

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