甲状腺腫(読み)こうじょうせんしゅ(英語表記)goiter

翻訳|goiter

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

甲状腺腫
こうじょうせんしゅ
goiter

甲状腺が大している状態をいう。正常な甲状腺は重さ約 20gであるが,それが触診により大きくなっているのがわかる。ヨウ素欠乏が原因とされるびまん性単純性甲状腺腫バセドー病といわれるびまん性中毒性甲状腺腫のほか,甲状腺の一部が腫大する結節性甲状腺腫などがある。

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百科事典マイペディアの解説

甲状腺腫【こうじょうせんしゅ】

甲状腺が異常に肥大腫脹した状態の総称。必ずしも腫瘍(しゅよう)を意味しない。甲状腺が腫れる炎症,腫瘍,酵素異常などの原因がなく,甲状腺機能の正常なものを単純性甲状腺腫という。この場合の甲状腺腫は,瀰漫(びまん)性でやわらかいのが特徴。バセドー病は機能亢進を伴う瀰漫性甲状腺腫といえる。かたい結節状の腫瘍を結節性あるいは腺腫状甲状腺腫という。腫脹の原因としては,甲状腺炎,癌,良性腫瘍,退行変性などがある。

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大辞林 第三版の解説

こうじょうせんしゅ【甲状腺腫】

甲状腺が腫れて肥大している状態。

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精選版 日本国語大辞典の解説

こうじょうせん‐しゅ カフジャウ‥【甲状腺腫】

〘名〙 甲状腺が大きく腫(は)れることの一般的呼称。腫瘍という意味ではなく、増殖、機能亢進、コロイドの増加や蓄積などが原因。〔医語類聚(1872)〕

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内科学 第10版の解説

甲状腺腫(症候学)

 正常甲状腺は,頸部正面の輪状軟骨の中央の高さから,第5~6気管軟骨前面に位置し,狭部は,第2~4気管軟骨の高さにある.狭部の上縁は,輪状軟骨下縁から数 mm下にある.男性では,甲状腺が女性よりも低い位置にあり一部鎖骨の背側にみられることがある.触診は前方より左右の母指を気管に押し当てるようにして行う.甲状腺の大きさは年齢とともに増加し,成人では約15〜20 g程度で,両葉とも表面平滑で充実した弾力感がある.
 甲状腺腫は,大半が無症状であり,視診と触診が診断の手がかりとして重要となる.症候学的には①びまん性と②結節性に大別される.嚥下運動に随伴して動くことが多く,甲状腺以外の腫瘤との鑑別が視診や触診で可能である.  びまん性甲状腺腫としては,単純性びまん性甲状腺腫以外に,自己免疫性甲状腺機能亢進症(Basedow病),自己免疫性甲状腺機能低下症(橋本病)の頻度が高い.単純性びまん性甲状腺腫は,臨床所見がなく,また炎症や腫瘍もなく,単に甲状腺が腫脹している場合をいう.これは地方性(endemic)と散発性(sporadic)に分けられる.地方性甲状腺腫は,食生活の中でヨード不足に起因するものであり,世界的には最も多い甲状腺腫である.わが国では,ヨード欠乏による甲状腺腫は皆無に近く,甲状腺へのヨード取り込みを阻害する食物あるいは薬剤を使用している場合に認められる.散発性の単純性びまん性甲状腺腫は,原因が明らかでなく,女性に多く思春期や妊娠時に発症することが多い.甲状腺機能亢進症では一般にびまん性の甲状腺腫大を認めるが,同時に,頻脈,手指振戦,体重減少,食欲亢進,心悸亢進,暑がり,多汗,下痢,情動不安,易疲労感,希少月経,無月経などの臨床症状が認められる.機能低下症は主として橋本病に起因するが,びまん性結節性の甲状腺腫大とともに,寒がり,体重増加,皮膚乾燥,便秘などの症状が認められる.亜急性甲状腺炎はびまん性あるいは限局性の腫脹を示し,甲状腺部の自発痛,圧痛を訴えることが特徴的である.初診時に発熱を,また20%の症例で甲状腺機能亢進症状を認める.なお無症候性の橋本病では,唯一びまん性結節性の硬い甲状腺腫が特徴である.先天性の甲状腺ホルモン合成酵素の障害による甲状腺腫の場合には,やわらかい甲状腺腫大が若年期から観察されることが多い. 結節性甲状腺腫は,さらに良性腫瘍と悪性腫瘍に大別される.囊胞は結節として触知される.腺腫様甲状腺腫も多くは結節性として認められる.これらはいずれも厳密には腫瘍ではないが,頻度が高く,結節性腫瘍との鑑別疾患として重要である.一方,良性腫瘍は柔らかく,可動性に富み,腫瘍表面は平滑,弾力性がある.良性結節には単発性の濾胞腺腫が最も多く,男女比は1:7.5~8である.なお,甲状腺ホルモンを過剰に生産する機能性腺腫はPlummer病とよばれ,FT3,FT4の上昇,TSHの抑制が認められる.
 悪性腫瘍はその経過が一般に長く,いつ発症したのか分からない場合が多い.分化癌(乳頭癌と濾胞癌)の結節は硬く,気管および前頸筋など周辺臓器への浸潤のため可動性が制限されている場合がある.中でも乳頭癌の頻度が高く,全体の悪性甲状腺腫瘍の90%以上を占める.甲状腺超音波検査で内部エコーの不均一性,微細石灰化(砂粒小体),囊胞状病変の乳頭増殖が認められる.気管,前頸筋への浸潤を伴っているか否か,さらに周辺リンパ節腫脹の有無に注意する.濾胞癌は,術前の確定診断が困難な腫瘍である.腫瘍細胞の被膜浸潤,甲状腺外への転移により病理診断される.髄様癌は甲状腺傍濾胞細胞より発生し,カルシトニン,CEAを過剰分泌する.甲状腺癌の1~2%を占め,遺伝性と散発性に分類される.遺伝性髄様癌は全体の約1/3で,多発性内分泌腺腫瘍(multiple endocrine neoplasia:MEN)2a型(副腎褐色細胞腫,副甲状腺機能亢進症を合併),MEN 2b型(口唇,舌などの多発性粘膜腫瘍,Marfan型体形),家族性髄様癌(familial medullary carcinoma of the thyroid:FMTC)に分類される.Ret遺伝子診断が有用である.未分化癌は,甲状腺癌の約1%前後を占めるが,60歳以上の高齢者に多く男女比は1:1である.分化癌の経過中に急性悪性転化する場合が多く,周囲への局所性浸潤性癒着を起こし,可動性はなく,ときに圧痛がある.頸部の急激な腫脹や局所皮膚の発赤,びらんなどに加え,全身転移をきたし,予後不良である.診断確定後数カ月の余命であり,種々の治療に抵抗性である.67Gaシンチスキャンで病変部に一致した集積像を呈する.悪性リンパ腫は,甲状腺悪性腫瘍の2~3%.60歳以上の女性に多い.慢性甲状腺炎を基礎疾患とする場合もある.弾性硬の腫瘤を触知し,超音波では比較的均一で著明な低エコー像を呈する.67Gaシンチスキャンで病変部に一致した集積像を呈する.
 以上,甲状腺腫は無症状であるが頻度が高く,その鑑別に重要なポイントをあげた.特に,日常臨床では甲状腺超音波検査が普及し,1 cm以下の微小病変の発見頻度が増している.その所見の読み方と対処法が重要であり,結節の質的診断の精度向上が課題である. 図2-22-1に甲状腺腫の診断フローチャートをまとめた.[山下俊一]

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世界大百科事典内の甲状腺腫の言及

【甲状腺】より

…適切な治療がなされないと脱水からの循環不全や肺水腫により死亡する。甲状腺腫や眼球突出などバセドー病の症状を伴う患者に上記の症状がみられたらクリーゼを疑い,速やかに治療を開始する必要がある。治療は,氷冷水,電解質の補給のほかに,大量の抗甲状腺剤と無機ヨウ素により甲状腺ホルモン分泌を抑え,同時にβ遮断剤(プロプラノロール)やステロイドによりホルモンの作用を抑制する。…

※「甲状腺腫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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