改訂新版 世界大百科事典 「マギ」の意味・わかりやすい解説
マギ
magi[ラテン]
メディア王国で宗教儀礼をつかさどっていた氏族の呼称。イランの旧称ペルシアと同じように,古代イラン語のマグmaguが,ギリシア語に借用され(マゴイmagoi),さらにラテン語化されたもの。単数形はマグスmagus。ヘロドトスの《歴史》には,マグの特異な風習として,死体を鳥や犬に食いちぎらせる,アリや蛇をはじめその他の爬虫類などを無差別に殺す,と記されている。この害獣を殺すのを義務とする信仰,特殊な葬送のやり方は,後代のゾロアスター教徒のそれと一致する。アケメネス朝ペルシア史上では,王弟を詐称して王位を奪したマグ(マゴス)のガウマータGaumātaをダレイオス1世が殺害して王位に就いた事件が記録されている。マギはギリシアの伝承では神秘な宗教知識の所有者とみなされ,《マタイによる福音書》(2:1以下)の伝える,イエス降誕を予知した東方の三博士(《共同訳聖書》では〈占星術の学者たち〉)の話(三博士の参拝)は,このような伝統に基づく。なお,マジックmagic(魔術,呪術,奇術)はこの語を語源とするものである。
執筆者:上岡 弘二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報