改訂新版 世界大百科事典 「マグネシウム肥料」の意味・わかりやすい解説
マグネシウム肥料 (マグネシウムひりょう)
magnesium fertilizer
マグネシウムを主成分とする肥料。苦土肥料ともいう。マグネシウムは植物葉の葉緑体の成分であり,各種の酵素の働きを助けるので植物の生育に必須の元素である。また土の酸度を矯正するアルカリ分として石灰と同様の効果を示す。
日本では第2次大戦後,調査が進むにつれ,マグネシウムの欠乏土壌が各所に広く存在することが判明し,1956年からマグネシウム肥料の製造販売が肥料取締法で認められた。主要なマグネシウム肥料には,硫酸苦土肥料と水酸化苦土肥料がある。硫酸苦土肥料は硫酸マグネシウムMgSO4を主要構成分とし,天然の硫酸マグネシウムから製造するほかに,製塩の際の副産品のにがりや蛇紋岩とかカンラン(橄欖)岩を硫酸で処理して製造し,年間約2万tが生産される。水酸化苦土肥料は水酸化マグネシウムMg(OH)2を主成分とするもので,にがりや海水に直接石灰乳を加えて製造し,年間約7万tが生産される。このほかに腐植酸と水酸化マグネシウムを反応させた腐植酸苦土肥料が年間約1万t生産され,ドロマイトの耐火煉瓦くずやフェロニッケル鉱滓(こうさい)の粉末を原料とする副産塩基性苦土肥料が年間約1.5万t生産される。また溶性リン肥やケイ酸肥料,石灰肥料,鉱滓などもマグネシウムを含む。
マグネシウムの施用量は1ha当り70~80kgがよく,pH6以上の土壌には硫酸苦土肥料を使用し,pH5.5以下の酸性土壌には水酸化苦土肥料がよい。カリウム肥料を多量に施用した場合,マグネシウムが不足しがちなのでマグネシウム肥料を併用するとよい。とくに野菜畑や温室栽培で効果が認められている。
執筆者:茅野 充男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報