石灰を主成分とした肥料。降雨量が多く,また酸性肥料の施用量の多い日本の耕地は石灰やマグネシウムなどのアルカリ分が流亡して酸性化しやすい。酸性土壌では作物の生育は不良になるので,土壌の酸度を矯正する必要がある。酸度の矯正には流亡した石灰やマグネシウムを補充する必要があり,石灰肥料はこのような土壌酸度の矯正と石灰分の補給に用いられる。土壌の酸性化しやすい日本では多量に生産・消費される肥料で,窒素,リン酸,カリに石灰を加えて肥料四要素と呼ばれている。
各種石灰肥料の原料となる石灰岩やドロマイトは日本で豊富に産出する。主要な石灰肥料には生石灰,消石灰,炭酸カルシウム,苦土石灰や他の産業の副生物として生産される副産石灰がある。生石灰は石灰岩をコークスとともに900~1000℃で焙焼(ばいしよう)して製造するが,その主成分は酸化カルシウムCaOで,アルカリ分は80%以上含有される。白色無定形の物質で溶解しにくいが,空気中では水や二酸化炭素を吸収して変化する。消石灰は生石灰に水を作用させたもので,主成分は水酸化カルシウムCa(OH)2である。アルカリ分を60%以上含み,長く空気中に放置すると二酸化炭素を吸収して炭酸カルシウムに変わる。消石灰は白色の粉末で水には少し溶解して,強いアルカリ性を示し,土壌酸性中和作用は速やかである。炭酸カルシウムは炭カルともいい,石灰岩をボールミルを用いて粉砕したもので,主成分はCaCO3であり,アルカリ分は53%以上含む。炭酸カルシウムの酸性中和作用は,その粒度に依存するので市販品の肥料では粒度が規格で定められ,1680μmの網ふるいを通り,590μmの網ふるいを85%以上通る粒度のものとされている。消石灰より酸性中和作用は緩慢であり,土壌とよく混和して用いる必要がある。苦土石灰はドロマイトまたはドロマイト質石灰岩を焙焼して製造し,2%クエン酸可溶性のマグネシウムを3.5%以上とアルカリ分を53%以上含む肥料である。マグネシウムが流亡して欠乏している酸性土壌によい。このほかに石灰窒素,溶成リン肥,ケイ酸石灰なども土壌酸性中和作用をもつ。また,特殊肥料に分類されているものに貝殻粉末,貝化石粉末などもあるが,これらも石灰肥料として用いられる。また下水汚泥などを脱水するための助剤として石灰を30%加えたものは石灰肥料になりうる。
石灰肥料の効果は土壌酸度の矯正である。施用に際しては予備的なチェックにより,耕地土壌のpHが6.0~6.5になるような量を求めて,土壌とよく混和し施用する。酸性を好む作物(チャやツツジ,パイナップルなど)では石灰過剰の被害があらわれやすいし,作物によっては土壌病害があらわれやすくなるので注意を要する。
執筆者:茅野 充男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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…旧国名。土州。現在の高知県。土左国,都佐国とも記す。
【古代】
南海道に属する中国(《延喜式》)。ただし865年(貞観7)に介を加置され国司の構成は上国と変わらなくなった。《古事記》の国生み神話には〈建依別(たけよりわけ)〉という別称が記されている。《先代旧事本紀(せんだいくじほんぎ)》の国造本紀には波多国造として天韓襲命,土佐国造として小立足尼の名がみえ,律令制的な国の成立以前,この地は土佐・波多両国造の支配下にあった。…
※「石灰肥料」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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