日本大百科全書(ニッポニカ) 「にがり」の意味・わかりやすい解説
にがり
bittern
海水から食塩を製造するとき、濃縮して食塩を結晶化させて取り出したあとの液をいう。苦汁(くじゅう)ともいう。マグネシウム塩を多く含み、苦味があるのでこの名がある。成分は製塩法によって多少異なるが、だいたいは、にがり100グラム中、塩化マグネシウム15~19、硫酸マグネシウム6~9、塩化カリウム2~4、塩化ナトリウム2~6、臭化マグネシウム0.2~0.4グラムを含む。大豆タンパク水溶液である豆乳に、にがりを少量加えると、主成分のマグネシウム塩によって、タンパク質コロイド粒子が塩析されて凝固してくるので豆腐製造に用いられる。日本では海水からの食塩製造が盛んであったので大量のにがりが得られたが、古くは豆腐製造程度にしか用いられなかった。しかし、現在では重要なマグネシウム資源であり、塩化マグネシウムや臭素などの無機薬品の重要な原料となっている。
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