翻訳|Missouri
アメリカ合衆国中部の州。面積18万0486平方キロメートル、人口559万5211(2000)。州都ジェファソン・シティ。東をイリノイ州とケンタッキー州とテネシー州、西をネブラスカ州とカンザス州とオクラホマ州、南をアーカンソー州、北をアイオワ州と境を接する。また、合衆国の二大河川であるミシシッピ川が東境を形成し、ミズーリ川が西から東に州土を二分し、セントルイスでミシシッピ川に注ぐ。地形的には、州土の3分の1を占めるミズーリ川北部域が大平原地帯で、肥沃(ひよく)な土地に恵まれ農業が発達する。広大な南部には標高500~600メートルのオザーク台地が広がり、景勝地も多く、観光・行楽地として知られる。さらに、西部はオーセージ平野、南東端部はミシシッピ沖積平野となっている。温暖湿潤気候を有し、気温差が激しい。経済的発展は州内を流れる二大河川に負うところが大で、古くから発達した農業に加え、近年は工業がそれを上回る勢いをみせており、そのほとんどが最大都市のセントルイスとカンザス・シティの二大都市周辺地域に集中し、人口の60%以上が両都市に住む。従来の運輸機械、食品加工、自動車、金属、薬品、印刷・出版に加え、最近は電子・電気機器、航空宇宙産業が発達し、工業の多様化はますます盛んになってきている。農業への依存度も相変わらず高く、ウシ、ブタなどの牧畜を中心に、トウモロコシ、大豆、小麦などの栽培が盛んである。そして、これらに続く観光業は豊かな自然と数多くの観光資源からも将来性が高い。
1670年代からフランス人などの探検隊が入ったが、1735年に州最初の町が開かれ、64年にはセントルイスも建設された。1803年の「ルイジアナ購入」で合衆国領になり、12年に準州、21年に第24番目の州に昇格した。住民が真っ二つに分かれて戦った南北戦争は、その後の州形成に大きな影響を与える結果となった。1859年に開通した鉄道によって、それまで水運に大きく依存していた同州に都市・工業化の波が打ち寄せた。1904年にはルイジアナ購入100年を記念した博覧会がセントルイスで開催され、第二次世界大戦後の工業の発達は目を見張るものがある。州内には、セントルイス、カンザス・シティを中心に、ミズーリ大学など数多くの大学や、第33代大統領H・トルーマンを記念したトルーマン図書館および博物館、ウィリアム・ロックヒル・ネルソン美術館など優秀な教育・文化施設を誇り、オザーク地方の10の人工湖、古戦場、史跡なども多い。また、『トム・ソーヤの冒険』『ハックルベリ・フィンの冒険』で有名なマーク・トウェーンゆかりの地としても知られる。州名はアルゴンキン・インディアン語で「泥の水」を意味する。
[作野和世]
アメリカ合衆国中西部の州。略称Mo.。連邦加入1821年,24番目。面積17万8414km2,人口598万8927(2010)。州都ジェファソン・シティ,最大都市カンザス・シティ。1803年のルイジアナ購入によって合衆国領となった。州名はアルゴンキン・インディアン語に由来するといわれ,〈泥の水〉(ミズーリ川を指す)を意味する。州の東境はミシシッピ川で,中央部をミズーリ川が流れる。台地と緩やかな丘陵が多いが,南部はオザーク台地で森林が広がる。気候は内陸性の湿潤大陸性気候で,トルネード多発地の一つである。ミズーリ州は別称〈Show Me State(証拠を示せ州)〉と呼ばれ,州民はうたぐり深い性格とされる。また,この州に多いラバのように頑固であるともいわれる。これはミズーリ州が農村的であることにもよるが,ミズーリ協定(1820)の結果,奴隷州として連邦に加入し,南北戦争の際には北部支持派と南部支持派との間で激しい内戦があったという歴史にもよるものであろう。ミシシッピ川沿いにあるためフランス領時代から毛皮商人が訪れ,ルイジアナ購入の際にはセント・ルイスはすでに西部開拓の拠点となっていた。今日,同市の川沿い公園には巨大なアーチGateway Archが建てられ,開拓時代の記念碑となっている。州北東部のミシシッピ河畔の町ハンニバルは,マーク・トウェーンが少年時代を過ごし,《トム・ソーヤーの冒険》の舞台となった町である。ミズーリは古くから小麦,トウモロコシ,綿花の栽培地として知られてきたが,近年は大豆(全米5位,1980)の産地として重要である。工業では農産加工に加え,第2次大戦後,航空宇宙,自動車,エレクトロニクスなどの産業が発達した。また,州南東部は全米有数の鉛の産出地である。
執筆者:正井 泰夫+岡田 泰男
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