湿潤気候
しつじゅんきこう
W・P・ケッペンによれば、樹木の成長に十分な雨量をもつ気候と定義され、乾燥気候と区別される。両者の境界を乾燥限界と称し、雨量のみならず気温も考慮している。実際に利用できる水の量は、雨量から蒸発などにより外界へ逃げる水を差し引いた残りである。蒸発は気温によって左右されるので、年平均気温t(℃)と年降水量r(ミリメートル)とから、湿潤・乾燥両気温を分ける限界線上の雨量rは次式により表される。
一年中多雨で乾燥なし
…r=20(t+7)
夏雨期、冬乾期
…………r=20(t+14)
冬雨期、夏乾期
…………r=20t
このように、全世界について、単一な式を用いず、降雨量の季節的配分の違いにより3地域に分けて、気候的限界値を求める実験式を用いている。さらに、湿潤気候は気温により熱帯、温帯、冷帯(亜寒帯)に分けられるが、寒帯は、寒冷なために乾燥気候とともに無樹木気候帯に属し、湿潤気候には含まれない。冬乾燥のサバナ気候、弱い乾期をもつ冬の熱帯季節風気候(熱帯モンスーン気候)と地中海性気候(夏)などを除いて、熱帯、温帯、冷帯の広い範囲にわたり湿潤気候が分布している。
[福岡義隆]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
湿潤気候 (しつじゅんきこう)
humid climate
広義には,W.P.ケッペンの気候区分のB(乾燥気候)以外のほぼすべての気候(A,C,D)に対して湿潤気候という。ただし,E(寒帯気候)とF(高山気候)の一部は無樹木地帯ということで,湿潤気候からは除外される。乾燥気候との境界について,ケッペンは,降水量と気温とを考慮した〈乾燥限界〉を提唱している。具体的には植生分布図の上で,樹木が存在する湿潤気候とそうでない気候を分ける区分線を設け,これに気候的な限界値を下式のように年降水量R(mm)と年平均気温T(℃)とによって定義してあてはめている。すなわち,湿潤と乾燥の両気候区を分ける限界線上の降水量は,
(1)1年中多雨で乾季なし…R=20(T+7)
(2)夏に雨季,冬に乾季…R=20(T+14)
(3)冬に雨季,夏に乾季…R=20T
ケッペンは湿潤気候を気温により熱帯,温帯,冷帯に分け,さらに雨季,乾季の現れ方で再区分している。
執筆者:福岡 義隆
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
湿潤気候
しつじゅんきこう
humid climate
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
世界大百科事典(旧版)内の湿潤気候の言及
【湿潤帯】より
…乾燥帯に対する言葉で,両者の限界を乾燥限界という。W.P.ケッペンは樹木の生長に十分な雨量をもつ気候を湿潤気候,雨量が不足し,樹木が生長しえない気候を[乾燥気候]とよび,両者の境界を乾燥限界と定義し,年降水量と年平均気温の比較から算出した。また,降水量と蒸発量の比較から求める方法もある。…
※「湿潤気候」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」