オランダ南西部,ゼーラント州ワルヘレンWalcheren島にある都市で同州の州都。人口3万8000(1980)。中世以来ゼーラント伯領の首都。1217年都市特権を認められ,イギリスとネーデルラント,ドイツを結ぶ中継貿易で栄え,15世紀末からアントワープの勃興に伴ってその外港としてにぎわった。オランダ独立後は,ムーシュロンMoucheronらアントワープの有力商人を迎え入れ,アントワープから退去したイギリスのマーチャント・アドベンチャラーズ(毛織物輸出商組合)が1582-1616年ここを本拠とするなど,新しい繁栄期を迎えた。東インド会社や西インド会社の設立にも積極的に参加。しかし,17世紀前半に,アムステルダムの日の出の勢いに圧倒された。現在も工業はあまり発達せず,周辺地域の流通,サービスの中心としての性格が強い。市の中央部の旧修道院(13世紀以降増築)や後期ゴシック様式の市庁舎(15世紀)がかつての繁栄のなごりをとどめる。
執筆者:石坂 昭雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
オランダ南西部、ゼーラント州の州都で、商工業都市。人口4万5427(2001)。現在は本土と結ばれているワルヘレンWalcheren島に位置し、伝統的な繊維工業やバター市で知られる。1217年に都市権を獲得後、対イギリス貿易の拠点として、また商業都市アントウェルペン(ベルギー領)の外港として繁栄し、東インド会社の創設にも参画した。オランダ独立戦争中はゼーラントにおけるスペイン側の最後の砦(とりで)となったが、1574年に反乱側のカルバン派海賊「海乞食(こじき)」が解放した。1150年設立の聖ニコラス修道院(現在は州議会議場)、16世紀の市庁舎などが残る。
[長谷川孝治]
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