ミナンカバウ族(読み)ミナンカバウぞく(英語表記)Minangkabau

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ミナンカバウ族」の意味・わかりやすい解説

ミナンカバウ族
ミナンカバウぞく
Minangkabau

元来スマトラ中央部のパダン高地に住む民族。他のインドネシアの諸地域やマレーシアにも分布している。人口は 200万~500万の間と推定される。言語はオーストロネシア語族に属する。かつてインド文化の影響を受け,マニラ帝国を建設して高原一帯を支配し,マレー半島に植民地をもっていた。沿岸マレー人と共通点が多いが社会組織が異なり,イスラム教徒であるにもかかわらず母系制社会である。スクといわれる母系出自集団があり,その長は兄弟の姉妹の息子に継承される。高床式で鞍形屋根の大家屋に母親とその姉妹,娘,子供たちが住み,息子は母親の家に住んで妻方を訪問した。最近は上記の親族組織の重要性が衰退し,男性たちは村を離れて妻子とともに世帯をもつ者が多くなり,親族集団の土地もこれら世帯が私有するようになった。信仰体系には,伝統的宗教,ヒンドゥー教,イスラム教が混在している。水田耕作,タバコ,シナモンの栽培のほか,木彫,金工,織物にすぐれる。

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世界大百科事典 第2版 「ミナンカバウ族」の意味・わかりやすい解説

ミナンカバウぞく【ミナンカバウ族 Minangkabau】

インドネシアの1種族。マレー語系のミナンカバウ語を話す。水稲耕作,商品作物栽培,家内工業商業を主たる生業とする。故地である現在の西スマトラ州に300万人,インドネシアの他地域に130万人在住すると推定される(1980)。マレー半島のヌグリ・スンビラン(九つの国の意で,マラッカ王国の西隣の地域)も,かつてミナンカバウ移住民によって植民されたものである。伝承では,アレクサンドロス大王末裔という。14世紀より19世紀初頭まで王を頂いていたが,王権はきわめて脆弱なもので,ナガリ(ムラ)が強い自律性を有していた。

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世界大百科事典内のミナンカバウ族の言及

【住居】より

…また,ニアス島をはじめスマトラ,スラウェシ,ボルネオ,さらにチモールの諸島に点在する大規模な木造屋根をもつ住居を建てるそうした民族は,大陸部から南下してきたプロト・マレー人の系統に属し,その後移動してきたデュエトロ(開化)・マレー人によって少数民族として山間僻地に追いやられるなかで,それぞれの民族のアイデンティティを住居形式として残してきたとも考えられている。
[ミナンカバウ族――母系制大家族の共住]
 西スマトラのミナンカバウ族の住居は,そうしたなかで,ほとんど唯一の母系制原理による大家族共住の形態として知られている。水牛の角をシンボライズするという,ゴンジョングと呼ぶ尖頭をもつその形態は実に勇壮である。…

【スマトラ[島]】より

… 民族は地域により複雑である。西岸沖合ニアス島のニアス族,本島中部のバタク族などはプロト・マレー系であるが,北部のアチェ族,西部高原のミナンカバウ族,南部のランポン族,東海岸のマレー人などはいずれも開化(第2次)マレー系である。このほか海岸各地にインド・アラブ系,中国系住民もおり,南部にはジャワ族の集団移住地もみられる。…

【血】より

…この悪い血をとらないと,若者は弱くなり,仕事をする気力がなくなり,狩りや戦争のとき手や目が利かなくなり,また性的能力も衰えるという。胎児が母親の経血によって養われるという観念は,西洋の古典医学,たとえばヒッポクラテスも,またスマトラのミナンカバウ族ももっており,広く分布している。血の生命力の信仰は血の神聖という考えにつらなる。…

【チンドゥア・マト】より

…インドネシア,スマトラ島のミナンカバウ族の代表的カバ。カバkabaはマレー文化圏に見られる口承物語の一種で,本来は韻文形式をとり,歌うようにして語られる。…

※「ミナンカバウ族」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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