改訂新版 世界大百科事典 「ヤブイヌ」の意味・わかりやすい解説
ヤブイヌ (藪犬)
bush dog
Speothos venaticus
食肉目イヌ科の哺乳類。アナグマに似た野生イヌ。ブッシュドッグともいう。中央アメリカのパナマから南アメリカのペルー東部,ガイアナ,パラグアイまでに分布する。体長57~75cm,尾長12~15cm,肩高約30cm,体重6kg前後。体は胴が長く四肢と尾は短い。歯は38本しかなく,イヌ科としては例外的に少ない。体毛は長く粗く,褐色で,頭,首,前半身が橙色,黄褐色,白色などであり,腹面,後半身,四肢,尾はほとんど黒色。森林や木の多い草原にすみ,水辺を好む。おもに昼行性らしく,夜は土穴や樹洞で過ごす。半水生といえるほど泳ぎや潜水がうまく,群れでカピバラやアグーチなどの比較的大きな齧歯(げつし)類を水中に追い込みとらえるという。群れは10頭ほどで形成され,高度に社会的で,協力して狩りをする。繁殖習性は不明な点が多いが,妊娠期間は76~83日くらいと推定され,1産2~6子を産んだ記録がある。飼育下での寿命は10年4ヵ月という例がある。
執筆者:今泉 忠明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報