テンジクネズミに似て巨大な半水生の哺乳類。齧歯(げつし)目カピバラ科に属する。パナマからアルゼンチン東部まで分布。最大の齧歯類で体長100~130cm,体重27~50kg,尾は痕跡的。体は太くがんじょう,頭は角ばり,左右に離れた鼻孔,突出した目,小さく丸い耳は,カバのように頭の上面近くに位置し,水中に身を潜めたまま敵のようすをうかがうのに適する。四肢はがんじょうで齧歯類としては長く,指行性で走るのに適し,指は前脚に4本,後脚に3本で指の間には小さい水かきがある。体毛は長く,まばらで皮膚が透けて見える。体の上面は赤褐色~灰褐色,下面は黄褐色。池,湖,川のあたりの下生えの茂った森林に,家族群または20頭以下の小群ですむが,ときに100頭,またはそれ以上の大群をなすことがある。日中は地面のくぼみに横たわって過ごし,夕方から夜にかけてと早朝に活動する。陸上では驚くとウマのように走って逃げるが,追い詰められると水に跳び込む。巧みに泳ぎ,数分間も潜水を続けることができる。穴は掘らない。もっぱら植物食で,水草が主食であるが,イネ科の草,若い木の皮も食べ,イネ,トウモロコシ,サトウキビなどを食い荒らすことがある。性質は温和。年中繁殖するが,出産は年1回で,1腹2~8子。妊娠期間は15~18週である。寿命は野生では8~10年,飼育下では12年以上に達する。天敵はジャガーとワニ。先住民は肉を食用とする。
執筆者:今泉 吉典
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
哺乳(ほにゅう)綱齧歯(げっし)目カピバラ科の動物。パナマ東部からアルゼンチン東部にかけて広く分布する。頭胴長130センチメートル、尾は痕跡(こんせき)的である。肩高は50センチメートルで、体重は雄50キログラム、雌60キログラム。世界最大の齧歯類で、外形は、モルモットの四肢を長くした姿に似る。前足に4指、後足に3指があり、つめはひづめ状で、後指には水かきが発達している。体上面は茶褐色の粗毛に覆われ、下面は黄褐色。半水生で、川や湖沼、湿地帯などが近くにある森林にすみ、20頭ぐらいの群れあるいは家族で生活し、おもに早朝または夕刻に活動する。水泳が巧みで潜水もし、水生植物や水辺に生える草を主食とする。妊娠期間は15~20週で、年1回雨期に2~8子を産む。肉は美味で食用となり、皮もシカ皮に似て軟らかく、しかも水で洗っても硬化しない。パナマの亜種はやや小形で、パナマカピバラまたはカルピンチョH. h. isthmiusとよばれ、体重は30キログラム前後である。
[土屋公幸]
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