日本大百科全書(ニッポニカ) 「ユニオン・カーバイド」の意味・わかりやすい解説
ユニオン・カーバイド
ゆにおんかーばいど
Union Carbide Corp.
アメリカの大手総合化学工業メーカー。略称UCC。同社は、2001年2月アメリカの同業大手ダウ・ケミカルに買収され、その完全子会社となった。
ユニオン・カーバイドの起源は、リンド・エアー・プロダクツ・カンパニー(1907年設立)、ナショナル・カーボン・カンパニー・インコーポレイテッド(1917年設立。1899年設立のナショナル・カーボン・カンパニーの後継会社)、プレスト・オー・ライト・カンパニー・インコーポレイテッド(1913年設立)、ユニオン・カーバイド・カンパニー(1898年設立)の4社が1917年に合併して設立されたユニオン・カーバイド・アンド・カーボン・コーポレーション(ニューヨーク州法人)である。
設立当初の同社は、電極、乾電池、アセチレンなどの生産を行っていたが、1920年代から1930年代にかけて合成化学、合成樹脂(プラスチック)の分野に進出、1927年にはポリ塩化ビニルの工業化に成功した。1957年ユニオン・カーバイドに改称。その後、石油化学、工業用ガスなどにも事業を拡大していった。しかし、1984年12月インド中部のボパールで大量の猛毒ガスを流出させる史上最悪の化学工場災害(ボパール事件)を起こし、多額の補償義務によって経営悪化に陥った。1980年代後半からは事業の分離・売却を進め、1990年代以降は、エチレン、ポリプロピレンなど基礎石油化学製品の製造のほか、さまざまな産業に使われる化学製品やプラスチックの製造を手がけた。また、ポリエチレンのメーカーとしても世界最大手であった。1998年の売上高は56億5900万ドル、純利益は4億0300万ドル。同年の売上高構成比は、特殊製品・中間製品が73%、基礎化学品・ポリマーが27%であった。また、売上高の59%が国内、41%が海外であった。
1999年8月、同社はダウ・ケミカルとの合併を発表した。両社の合併は事実上ダウ・ケミカルによる買収であり、新会社のポリエチレン事業における高い市場シェアが独占禁止法に触れるおそれがあったため、アメリカ連邦取引委員会(FTC)の合併審査が難航、長期間の審査を経て2001年2月に合併が完了した。両社の合併により、ダウ・ケミカルは世界最大のデュポンと並ぶ規模の化学会社となっただけでなく、ポリエチレン事業などで世界トップの地位を確立することとなった。
全額出資の日本法人であるユニオン・カーバイド日本は、合併に伴いダウ・ケミカルの日本法人に事業を組み込む形で統合された。ソニーとの合弁による電池会社のソニー・エバレディが1975年(昭和50)に設立されたが、1986年に合弁は解消された。
[佐藤定幸・萩原伸次郎]
『デビッド・ウィヤー著、鶴見宗之助訳『農薬シンドローム――ボパールでなにが起こったか』(1987・三一書房)』▽『ダン・カーズマン著、松岡信夫訳『死を運ぶ風――ボパール化学大災害』(1990・亜紀書房)』