改訂新版 世界大百科事典 「ヨシノボリ」の意味・わかりやすい解説
ヨシノボリ (葭登)
common freshwater goby
Rhinogobius brunneus
スズキ目ハゼ科の魚。朝鮮半島,台湾,アジア大陸東部に分布し,日本の全国各地にふつうに見られ,ゴリ(近畿地方)をはじめ地方名も数多い。体色は全体に黄褐色ないし灰褐色をなしさまざまな斑紋が見られるが,地域によって著しく異なる。また,生息域も河川,湖沼,れき地,泥地とさまざまである。胸びれが大きく,上端3~4条は膜から遊離している。雄の成魚では第1背びれが長い。産卵期は6~8月ころで,雄は体色が黒くなり,背びれの先端が赤くなる。雌の腹の卵数は1000~2500粒で,扁平な石などの下面に複数の雌によって500~7000粒ほど産みつけられる。雄は卵を保護する。卵は紡錘形で(2.0mm×0.63mm),卵黄は球形(0.5mm)をなす。水温24℃で約4日で孵化(ふか)し,河川にすむものは一度海へ下り浮遊期を過ごし,春,川をさかのぼる。稚魚期には単細胞藻類,ミジンコ,成魚では底生動物・藻類を摂餌し,全長12cmに達する。稚魚をみそ汁の具にしたり,成魚を飴だき,つくだ煮にする。
執筆者:松下 克己
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報