日本大百科全書(ニッポニカ) 「リクガメ」の意味・わかりやすい解説
リクガメ
りくがめ
land tortoise
爬虫(はちゅう)綱カメ目リクガメ科に属するカメの総称。この科Testudinidaeの仲間は約10属38種がヨーロッパ南部、サハラ砂漠を除くアフリカ、マダガスカル島、アジア南部、アメリカ大陸に分布し、日本にはみられない。甲長50センチメートルを超える大形種が多く、マダガスカル島産のホウシャガメGeochelone radiataなど、甲に美しい模様をもつものが多い。背甲はドーム形で背が高く、腹甲ともに堅固な構造になっている。重い甲を支える四肢は柱状で太く、表面は堅い鱗板(りんばん)で覆われ、つめが丸い。頭頸(とうけい)部を甲内に引っ込めたあとのすきまは、堅い四肢でふさぐ。アフリカ産のセオリガメ属Kinixys3種は甲長20~30センチメートル、背甲の後部が蝶番(ちょうつがい)状に連結しており、下方に折り曲げて後部のすきまを蓋(ふた)する。リクガメ類はまったくの陸生で、草原、荒れ地、砂漠などの乾燥地に生息し、ほとんど水に入らない。しかしセオリガメなどは水かきを欠くものの、泳ぎが巧みである。餌(えさ)は主として果実、草、サボテンなどの植物質で、昆虫、カタツムリなども食べる。卵生で100~200日ほどかかって孵化(ふか)する。
主グループであるリクガメ属Geocheloneには、陸生ガメでは最大種であるアルダブラゾウガメG. giganteaとガラパゴスゾウガメG. elephantopusの甲長1.2メートルをはじめ、アフリカ産のケヅメリクガメG. sulcataの75センチメートル、ヒョウモンリクガメG. pardalisの65センチメートルなどの大形種がそろっている。しかしギリシアリクガメ属Testudoは小形で、北アフリカ産のエジプトリクガメT. kleinmanniは甲長12センチメートルにすぎない。変わり種は東アフリカ産のパンケーキガメMalacochersus tornieriで、甲長15センチメートル、甲が軟らかく、驚くと岩のすきまに入って体を膨らませるため、引っ張り出すことができない。北アメリカの砂漠にすむアナホリガメ属Gopherusは、砂に穴を掘って巣穴としている。
[松井孝爾]