日本大百科全書(ニッポニカ) 「リン酸アンモニウム」の意味・わかりやすい解説
リン酸アンモニウム
りんさんあんもにうむ
ammonium phosphate
2種の水素塩と正塩が知られており、通常リン酸アンモニウムというときは一水素塩(NH4)2HPO4をいうことが多く、これはまたリン安とよばれて肥料に用いられる。
(1)リン酸アンモニウム 俗称第三リン酸アンモニウム。化学式(NH4)3PO4、式量149.09。リン酸一水素二アンモニウム(NH4)2HPO4と塩化アンモニウムの混合溶液を熱してからアンモニア水を加えて結晶を析出させると、三水和物(NH4)3PO4・3H2Oが得られる。無色の柱状晶。空気中に放置するとアンモニアを失う。水によく溶ける。水溶液を熱すると(NH4)H2PO4を生ずる。
(2)リン酸一水素二アンモニウム 俗称第二リン酸アンモニウム。化学式(NH4)2HPO4、式量132.06。リン酸水溶液に必要量のアンモニアを加えて得られる。無色の結晶。密度1.619。15℃の水100グラムに131グラム溶ける。アセトンに不溶である。熱すると155℃でアンモニアを失って(NH4)H2PO4となる。銅、黄銅などの蝋(ろう)付け用融剤、培養基などとして、また肥料として多く用いられる。
(3)リン酸二水素アンモニウム 俗称第一リン酸アンモニウム。ADPと略記される。化学式(NH4)H2PO4、式量115.03。リン酸水溶液に必要量のアンモニア水を加えて得られる。無色の結晶。密度1.803(19℃)。水100グラムに22.7グラム(0℃)、173.2グラム(100℃)溶ける。190℃で融解し、190.5℃で分解し始め、メタリン酸アンモニウム(NH4PO3)nとなる。(NH4)H2PO4の単結晶は圧電率、誘電率が大きいので、巨大単結晶をつくって高周波発振子に用いられている。また緩衝剤、培養基としても用いられる。
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