フランス中南部,オート・ロアール県の都市。人口2万4064(1982)。ロアール川支流ボルヌBorne川に沿う。火山性盆地内に浸食に耐えた岩山がいくつか残り,おのおのの頂を教会堂や聖母像が占めて独特の景観を呈する。ノートル・ダム大聖堂は市心の丘の上の旧ローマ神殿跡に位置し,11~12世紀にロマネスク様式で再建されたもの。大革命時に焼失した〈黒い聖母〉像は,中世を通じて外国からも巡礼をひきつけ,ル・ピュイは,サンチアゴ・デ・コンポステラへの重要な宿駅として栄えた。ブレーVelay地方では例外的規模の同大聖堂は,ロマネスク建築の中で独自の地位を占めるもので,身廊を覆う穹隅式円蓋列,モサラベ美術の影響を示す多色遣いモザイクや馬蹄形アーチの回廊,アラビア文字を刻む木彫扉などを見る。岩山の一つエギュイユ・サン・ミシェル(高さ80m)の頂にも,かつてのメルクリウス神殿に代わって,三葉形アーチなどモサラベ風装飾を伴う大天使ミカエル礼拝堂(11世紀)が立つ。サン・ローラン教会(14世紀)は,ブレー地方にまれなゴシック建築の例。名高いレースの生産は,今日も主要な産業の一つである。
執筆者:岸本 雅美
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
フランス中南部、オート・ロアール県の県都。正式にはル・ピュイ・アン・ブレーLe Puy-en-Velayという。人口2万0490(1999)。マッシフ・サントラル(中央群山)山中のピュイ盆地を占め、標高630メートル地点に位置する。北側に火山性のコルネイユの岩(比高約70メートル)があり、岩上に聖母フランス像が立ち、麓(ふもと)にロマネスク様式のノートル・ダム大聖堂(12~13世紀)や僧院を配して奇観を呈する。大聖堂の黒い聖母マリア像は10世紀以来多くの巡礼者を集めてきた。北西の塔状のエギュイーユ山は、頂上に11世紀のサン・ミッシェル教会をのせている。皮革、レース製造の伝統産業があるが、工業は振るわず人口は停滞している。
[大嶽幸彦]
…ロマネスクの特徴である柱頭彫刻もみごとに保存されており,ブルゴーニュやポアトゥーのロマネスクと並んで,中世美術の宝庫である。オーベルニュの南東の隅にあるル・ピュイのノートル・ダム大聖堂は,岩山の上に特異な姿を示す,12世紀に建立されたロマネスクの教会堂だが,東方ビザンティン様式の影響を受けており,オーベルニュ独自のロマネスクとはいえない。しかし,この大聖堂はフランスでのマリア信仰の中心地として多くの信者を集め,また,中世における指折りの巡礼地であったスペインのサンチアゴ・デ・コンポステラに至る重要な道筋のひとつとして,巡礼が列をなしたという。…
※「ルピュイ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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