改訂新版 世界大百科事典 「三分損益」の意味・わかりやすい解説
三分損益 (さんぶんそんえき)
中国の音律算定法。日本の雅楽の理論にも用いられる。三分損一(律管の長さを3分の1だけ短くして,完全5度上の音を求める)と三分益一(3分の1の長さを足して3分の4の長さの律管を作り,完全4度下の音を求める)とを交互に行って管長を算出して音律を定める法をいう。中国では五声,七声,十二律をすべてこの方法で算出する。主音を宮として三分損一により徴(ち)を求め,徴を三分益一して商を求め,この手続きを繰り返して羽と角を求め,音高の順に並べて宮・商・角・徴・羽の五声を得る。さらに変徴,変宮を求めて七声とする。十二律は黄鐘を基準音にして三分損益により林鐘,太簇(たいそう)/(たいそく),南呂,姑洗(こせん),応鐘,蕤賓(すいひん),大呂(たいりよ),夷則(いそく),夾鐘,無射(むしや)/(ぶえき),仲呂(ちゆうりよ)の順で求める。三分損益法は中国では周代の末にはすでに行われ,漢代に至って発達し,以後近代に至るまで音律算定の基礎となっている。日本では三分損益を〈順八逆六〉と呼ぶこともあるが,〈順八〉が三分損一に,〈逆六〉が三分益一に当たる。
→音律
執筆者:三谷 陽子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報