出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
… 中国ではすでに《呂氏(りよし)春秋》に十二律の概念が現れ,1オクターブ中に12の音律が規定されていた。これは黄鐘(こうしよう)を基準音として三分損益を繰り返し算出して得られる11音を高さの順に並べ変えて,下から黄鐘,大呂(たいりよ),太簇(たいそう∥たいぞく),夾鐘(きようしよう),姑洗(こせん),仲呂(ちゆうりよ),蕤賓(すいひん),林鐘(りんしよう),夷則(いそく),南呂(なんりよ),無射(むしや∥ぶえき),応鐘(おうしよう),黄鐘とした。これはピタゴラス音律の算定法と同じ原理に基づくもので,第12番目に得られる1オクターブ上の黄鐘は,厳密にいえば,基準音と同律ではなく,ピタゴラス・コンマだけ高くなってしまう。…
… これらの語の出典として,中国の史書や古典のうち《書経》《国語》《礼記(らいき)》《周礼(しゆらい)》《史記》などもあげられるが,この種の書では,度量衡を正しく定めることの政治的な意義が強調されている場合が多いようである。度量衡の,より実際的な,いくらか技術的な叙述は,例えば《漢書》の律暦志に見え,度は長短,量は多少,衡は軽重を知ることだといった説明や,度の起源は〈黄鐘(こうしよう)〉という笛の長さであって,黄帝(伝説上の帝王)が人を昆侖(こんろん)に派して求めた竹でこの笛を作ったなどの史談もしるされている。この史談は,《十八史略》のような簡明な史書を通じて近代の中国,日本に伝承され,広く知られるようになった。…
…すなわち,ニ・ホ・ト・イ・ロという音程関係を宮・商・角・徴・羽にあてはめたもので,中国の徴調の五声に相当し,同じ形が後に律の五声と呼んだものにみられる。つまり唐俗楽二十八調中,日本に伝来した調の主音は,壱越(いちこつ)(ニ),平調(ひようぢよう)(ホ),双調(そうぢよう)(ト),黄鐘(おうしき)(イ),盤渉(ばんしき)(ロ)の五つであり,壱越は唐の古律の太簇(たいそう)であるが,俗律の黄鐘(こうしよう)とも考えられたので,日本ではこれを基準音とみなし,これを宮として以下4声を順次並べて徴調の五声音程の新五声(徴・羽・宮・商・角を宮・商・角・徴・羽と呼びかえたもの)を生じた。そののち鎌倉時代の声明家の間でしばしば論争が行われたが,結局,五声を説く場合,雅楽でも声明でも呂(りよ)は中国理論のままの宮調型五声,律は徴調型の五声を述べるのがならわしとなった。…
…謡の伴奏の笛は,謡が拍子合であるか拍子不合であるかに関係なく,つねにアシライ吹キで,謡の拍に合わせて拍を刻んで吹くということがまったくない。笛のもう一つの楽型である調型は,各句の旋律がどの指使いの音に帰結するかによって定まる楽型で,これに黄鐘基調(おうしききちよう)と盤渉(ばんしき)基調がある。前者が広く用いられる基本的な調型で,後者は変化をもたせて音高を高くとる調型である。…
※「黄鐘」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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