五声(読み)ごせい

精選版 日本国語大辞典 「五声」の意味・読み・例文・類語

ご‐せい【五声】

〘名〙
① =ごいん(五音)(一)③
経国集(827)一・嘯賦〈菅原清公〉「伊八音之雅倫、共五声而変会」 〔書経‐益稷〕
※和漢朗詠(1018頃)下「五声の宮漏の初めて明けて後、一点の窓の燈の滅(き)えなむとする時〈白居易〉」

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デジタル大辞泉 「五声」の意味・読み・例文・類語

ご‐せい【五声】

中国・日本音楽で、音階を構成するきゅう・商・角・の五つの音。特に、雅楽声明しょうみょうでの用語。五音ごいん・ごおん。→七声
五更の第5番目の時刻。戊夜ぼや

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改訂新版 世界大百科事典 「五声」の意味・わかりやすい解説

五声 (ごせい)

音楽理論用語。五音ともいい,広くは5音音階を意味する。中国音階の基調をなし,日本,朝鮮にも入った。宮・商・角・徴(ち)・羽の5音からなり,徴と宮の半音下の変徴・変宮を加えたものを七声という。

 五声は中国では周末から前漢にかけて,その算法を記した《管子》《呂氏春秋》《淮南子(えなんじ)》などがある。その算法は,宮を出発音として,三分損益の法で,5度上と4度下を交互にとり,宮・徴・商・羽・角の順で決定する。これを音高順に並べると,下から宮・商・角・徴・羽(ド・レ・ミ・ソ・ラに相当)となる。周末までは宮を中央に置いて,徴・羽・宮・商・角と配列したようであるが,漢代に至り,宮を最低位に置いた配列になり,宮は洋楽の主音と同義になった。また木火土金水の五行説が音律と結合して,五声のおのおのに方位など種々の意義を持たせるようになった。

 五行思想の影響は強く,雅楽は変声を含む七声を避けてもっぱら正声のみからなる五声を用いるべきであるとされ,起調畢曲の音(主音)は五声に限り,古くは宮音のみが主音になるべきであると考えられた。隋・唐時代には西域音楽の影響もあって,俗楽のみならず雅楽でも七声が用いられるようになったが,唐・宋以後も儒教復古主義のもとでは雅楽における五声主義は儒学者によって強く主張された。

 日本に唐楽が伝来した奈良時代には,中国の理論による宮・商・角・徴・羽を五声と呼んだが,平安時代に入ると日本式の五声の萌芽が現れた。すなわち,ニ・ホ・ト・イ・ロという音程関係を宮・商・角・徴・羽にあてはめたもので,中国の徴調の五声に相当し,同じ形が後に律の五声と呼んだものにみられる。つまり唐俗楽二十八調中,日本に伝来した調の主音は,壱越(いちこつ)(ニ),平調(ひようぢよう)(ホ),双調(そうぢよう)(ト),黄鐘(おうしき)(イ),盤渉(ばんしき)(ロ)の五つであり,壱越は唐の古律の太簇(たいそう)であるが,俗律の黄鐘(こうしよう)とも考えられたので,日本ではこれを基準音とみなし,これを宮として以下4声を順次並べて徴調の五声音程の新五声(徴・羽・宮・商・角を宮・商・角・徴・羽と呼びかえたもの)を生じた。そののち鎌倉時代の声明家の間でしばしば論争が行われたが,結局,五声を説く場合,雅楽でも声明でも(りよ)は中国理論のままの宮調型五声,は徴調型の五声を述べるのがならわしとなった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「五声」の意味・わかりやすい解説

五声
ごせい

音階理論用語。中国に始まり、朝鮮、日本、ベトナムに伝わった。五音(ごおんごいん)ともいい、五音音階を意味する。各音は宮(きゅう)・商(しょう)・角(かく)・徴(ち)・羽(う)とよばれ、徴と宮の半音下に変徴・変宮の2音を加えたものを七声という。おもに雅楽や声明(しょうみょう)で用いられる。

 中国音階の基調をなす五声は、宮を出発点とし、三分損益法(さんぶんそんえきほう)で5度上、4度下と音を交互にとることによって得られる。これを音高順に配列すると宮・商・角・徴・羽となり、西洋音階のド・レ・ミ・ソ・ラに相当する。五声がいつごろから用いられたのかは不明であるが、周末から前漢にかけて、前述の算法が『管子(かんし)』『呂氏春秋(りょししゅんじゅう)』『淮南子(えなんじ)』に記されている。さらに、漢代には方位や五行説と深く結び付いた。

 日本へは奈良時代にこの中国の五声が移入されたが、平安時代になると日本式の五声が生まれた。それは、中国の五声の第五度(徴)を宮に読み替えた音階で、西洋音階のド・レ・ファ・ソ・ラに相当するものである。前者を呂(りょ)、後者を律(りつ)と区別した。その後、律の五声に新たなものも加わったが、中国の五声を呂、日本式の五声を律とよぶのが習わしとなった。

[山口 修]

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普及版 字通 「五声」の読み・字形・画数・意味

【五声】ごせい

宮・商・角・徴(ち)・羽の五つの音階。五音。〔周礼、春官、大師〕六律・六同を掌り、以て陰陽の聲を合す。~皆之れを(かざ)るに五聲、宮を以てし、皆之れを播(し)くに、金石土革絲木匏竹を以てす。

字通「五」の項目を見る

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百科事典マイペディア 「五声」の意味・わかりやすい解説

五声【ごせい】

中国・日本の音楽理論用語。日本では,五音(ごいん)/(ごおん)ともいう。1オクターブ内の5つの音からなる音列(5音音階)のこと。下から順に,宮(きゅう),商(しょう),角(かく),徴(ち),羽(う)と呼ぶ。徴の半音下の変徴,宮の半音下の変宮を加えたものは七声と呼ぶ。各音の相対的な音程関係は,西洋音楽でのドレミソラに等しい。日本の古代・中世の音楽理論では,中国の理論でいう五声を〈呂の五声〉とし,そのほかに〈律の五声〉を設け,その場合の音程関係はソラドレミに等しくなるとした。近世以降の音楽種目では,理論上の五声の各音の名称は,音程関係を示す階名としてよりも,音階中の順位を示す語として使用されるようになった。

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占い用語集 「五声」の解説

五声

中国や日本の音律のこと。宮(きゅう)・商(しょう)・角(かく)・緻(ち)・羽(う)の五つの音を指し、宮は土、商は金、角は木、緻は火、羽は水に五行が配される。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「五声」の意味・わかりやすい解説

五声
ごせい

五音」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の五声の言及

【雅楽】より

…舞人ははじめ4人であったが,戦国時代末には12人の六佾の舞が現れた。五声七声十二律の音楽理論もしだいに整い,琴(きん),瑟(しつ),鐘(しよう),磬(けい),管,籥(やく),笙(しよう),篪(ち),壎(けん),缶(ふ),柷(しゆく),敔(ぎよ),鼓,編鐘,編磬などの古代雅楽器もひととおりそろい,これらの楽器は材質によって八音(はちおん)(金,石,土,革,糸,木,匏(ほう),竹)に分類された。漢代(前206‐後220)に至り,礼楽思想のもとに国家は統治政策の一端として雅楽の制度確立をはかった。…

【五音】より

…日本の伝統的音楽理論用語。五声ともいう。1オクターブの中に設定される五つの音階音,すなわち宮(きゆう),商,角,徴(ち),羽(う)をいう。…

※「五声」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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