三島(陶芸)(読み)みしま

日本大百科全書(ニッポニカ) 「三島(陶芸)」の意味・わかりやすい解説

三島(陶芸)
みしま

朝鮮半島李朝(りちょう)時代の前期を代表する陶芸。日本では一般に三島手(で)、刷毛目(はけめ)ともいう。名称の由来は、その文様が三島暦(江戸時代に静岡の三嶋大社が発行した暦)の文様に似ていることによるとするのが通説で、暦手(こよみで)ともよぶ。近年韓国では粉青沙器(ふんせいしゃき)と称している。

 高麗(こうらい)時代の象眼(ぞうがん)青磁の技法が崩れて衰退していく過程で生まれ、一作風として定着した。作種は技法上から、彫(ほり)三島、釘彫(くぎぼり)三島、刷毛目、絵三島などに分けられる。三島は細やかな象眼文を主体とするが、灰色の素地(きじ)に印花文(いんかもん)などを施し、白土で化粧がけしたのち、透明釉(ゆう)をかけたものが基本で、大柄の文様の周りを掻(か)き落とし、ここに白土を埋めたものが彫三島である。また釘で文様を粗く線彫りして白土を象眼したのが釘彫三島で、白化粧の上に鉄絵が加わると絵三島となる。文様上の特色から、花(はな)三島、檜垣(ひがき)三島、角(かく)三島、渦三島などの称があり、銘文の文字から礼賓(れいひん)三島とよばれるものもある。窯は半島全体に分布しているが、とくに忠清南道公州市の鶏竜山窯(けいりゅうざんよう)が名高く、15世紀が全盛期で、16世紀までは焼成されたが、壬辰倭乱(じんしんわらん)(文禄(ぶんろく)・慶長(けいちょう)の役)を境に17世紀にはこの系譜はとだえ、半島南部の窯の多くは白磁窯に転じていった。なお、室町末期に日本でわび茶の茶碗(ちゃわん)として半島の粗製碗を珍重し始めたが、まず三島が注目されて高い声価を得た。伝世の「上田暦手(うえだこよみで)」「三島桶(おけ)」「大三島」「二徳三島」などの名品は古(こ)三島ともよばれ、また江戸初期に釜山(ふざん)窯などで日本からの注文で焼かれた三島茶碗を御本(ごほん)三島という。

[矢部良明]

『田中豊太郎著『陶磁大系30 三島』(1976・平凡社)』『『世界陶磁全集19 李朝』(1980・小学館)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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