三教会同(読み)さんきょうかいどう

改訂新版 世界大百科事典 「三教会同」の意味・わかりやすい解説

三教会同 (さんきょうかいどう)

明治政府による神道仏教キリスト教代表者の会同。日露戦争後の社会的矛盾の激化富国強兵の国民的合意風化に対し,政府は過激思想を弾圧し,家族国家観による国民教化にとりくんだ。内務次官床次(とこなみ)竹二郎は欧米視察で宗教の感化力の大きさを知り,日本の諸宗教を国民教化に協力させようとし,政府当局や宗教団体を説得し,この会同を実現した。1912年2月25日内務大臣原敬は政府関係者とともに教派神道13名,仏教諸派51名,キリスト教7名の代表者と懇談し,国民道徳振興への協力を求めた。翌日三教代表者は集まり皇運扶翼,国民道徳振興を誓い,政府に宗教尊重,政治・宗教・教育の融和を求める決議をした。ただし神社非宗教論により神社当局は招かれず,文部省,真宗大谷派は不参加。この会同はキリスト教を他宗教と同等に扱うことで,天皇制教育に動員しようとしたもので,キリスト教側では数名の反対があったが,大勢はこれに同調した。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「三教会同」の意味・わかりやすい解説

三教会同
さんきょうかいどう

日本の神道,仏教,キリスト教の各派が集って,国民道徳の向上のため協力を約した会合。内務次官床次竹二郎が提唱したもので,政府の企画,後援によって実現した。床次は,ヨーロッパにおいて宗教が大きな社会的感化力と指導力を発揮していることを知り,日本においても宗教の力を借りて危険思想を防ぎ,社会秩序の安定をはかろうとして,広く宗教界に呼びかけた。 1912年2月 25日華族会館で行われた会同には,神道 13派代表 13名,仏教 14宗代表 50名,キリスト教からは,メソジスト組合教会バプテスト,日本基督教会,聖公会,天主公教 (カトリック) の各代表が出席した。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「三教会同」の解説

三教会同
さんきょうかいどう

内務次官床次(とこなみ)竹二郎の斡旋した神道・仏教・キリスト教の3宗教各宗派の代表者71人と政府関係者の会合。1912年(明治45)2月25日に華族会館で開かれた。翌日には3宗教の代表が集まり,国民道徳の振興,国民精神の陶冶(とうや)のための政治・教育・宗教の3者の協調を決議。政府はキリスト教を神道・仏教と同等に扱い,国民教化における宗教の役割に期待した。

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