家庭医学館 「上咽頭がん」の解説
じょういんとうがん【上咽頭がん Nasopharyngeal Cancer】
上咽頭は、鼻腔(びくう)のもっとも奥の咽頭へつながる部位で、鼻咽腔(びいんくう)ともいいます。
上咽頭がんは、発症にEBウイルスの感染が関与すると考えられ、中国南部や東南アジアで多発していますが、日本では比較的まれな病気です。
この病気は、40歳から50歳代に罹患(りかん)のピークがありますが、10代、20代にもみられます。一般のがんよりも若くして発症するのが特徴です。
[症状]
鼻づまり、鼻出血(びしゅっけつ)、鼻汁(びじゅう)などの鼻症状がおこります。
上咽頭には、耳とつながる耳管(じかん)が開口しているため、耳の塞(ふさ)がった感じや、難聴(なんちょう)などの耳の症状がおこり、滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)がおこる場合もあります。
頸部(けいぶ)リンパ節(せつ)に転移しやすく、とくに耳介(じかい)に近い上頸部のリンパ節が腫(は)れる場合が多いものです。
進行すると、外転神経がまひするため、複視(ものが二重に見える)、三叉神経痛(さんさしんけいつう)、嚥下障害(えんげしょうがい)(ものが飲み込みにくい)などの脳神経症状がおこります。
[検査と診断]
観察がむずかしい部位のため、早期診断が困難で、頸部のリンパ節が腫れてから見つかる場合もあります。鼻腔ファイバースコープ検査を行ない、異常があれば一部の組織をとって検査します。CTやMRIも行なわれます。
[治療]
手術が困難な部位ですが、放射線治療の効果が高く、5年生存率は約60%、10年生存率は約50%です。近年は、抗がん剤の併用が行なわれ、さらに成績が向上しています。しかし、肺や骨に転移してくることもあるので、治療後も定期的に通院し、検査を続けることが必要です。
鼻づまりが続き、いつも鼻汁に血液が付着する、耳の塞がった感じがとれないといった場合は、若い人でも、上咽頭がんを疑ってがん専門の耳鼻咽喉科医(じびいんこうかい)のいる医療機関を受診しましょう。