日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
下垂体性PRL分泌亢進症
かすいたいせいぴーあーるえるぶんぴつこうしんしょう
下垂体のプロラクチン(PRL)産生腺腫(せんしゅ)(プロラクチノーマprolactinoma)よりPRLが過剰に分泌されることによって生ずる疾患。指定難病。PRLは下垂体の前葉から分泌されるホルモンの一つで、乳汁の産生と分泌を促進する作用をもつ。PRLの分泌が過剰になると、女性では月経不順や無月経、不妊、乳汁分泌、頭痛、視力視野障害等の症状が、男性では性欲低下、陰萎(いんい)(インポテンス)、頭痛、視力視野障害、女性化乳房、乳汁分泌などの症状が出現する。通常、PRLの分泌は視床下部の抑制因子により抑制されているため、視床下部が障害されるとPRL分泌が過剰になる。視床下部や下垂体に病変がなくても、薬物の副作用や甲状腺機能低下症、慢性腎不全などによりPRL分泌が過剰になることもある。
1999年度(平成11)の厚生省(現、厚生労働省)疫学調査によると、プロラクチノーマを含むPRL分泌過剰症患者は1万2400人で、プロラクチノーマの発生率の男女比は、男性1に対して女性3.6であった。一部の遺伝性疾患を除き、腫瘍の発生原因は不明である。プロラクチノーマの治療の第一選択は薬物療法であるが、摘出手術が試みられることもある。
なおPRL分泌低下による症状は、下垂体前葉機能低下症(指定難病)の症状の一つである。
[大久保昭行 2016年6月20日]