日本大百科全書(ニッポニカ) 「不妊法」の意味・わかりやすい解説
不妊法
ふにんほう
sterilization
一時的に妊娠を避けるために可逆的な方法を用いる避妊法(受胎調節)に対し、人工的に生殖能力を永続的に失わせる方法を不妊法といい、男性不妊手術と女性不妊手術がある。なお、卵巣や子宮あるいは精巣(睾丸(こうがん))を摘出すれば当然不妊をきたすが、不妊を目的として行う手術でなければ、不妊手術とはいわない。かつては断種法とよばれたこともある。現在では母体保護法に基づいて行われる。
[新井正夫]
男性不妊手術
射精された精液中に精子がなければ受精は成立しないわけで、このために睾丸でつくられた精子が精嚢(せいのう)に運ばれる途中の精管を遮断する方法がとられる。俗にパイプカットともよばれる精管切除術(精管切断術)がもっとも広く行われている。
[新井正夫]
女性不妊手術
精子が卵管を上昇してくるのを妨げれば受精は成立しないわけで、このために両側の卵管の疎通性をなくす方法がとられている。これには種々の術式があるが、代表的なものは、卵管峡部を圧迫して結紮(けっさつ)する卵管圧挫(あつざ)結紮法(マドレーネルMadlener法)と卵管結紮切除法(ポメロイPomeroy法)で、ともに、開腹して行う腹式と、開腹せずに腟(ちつ)内から行う腟式とがある。このほか、帝王切開術に併用する結紮切断法や腹腔(ふくくう)鏡を使った電気凝固法などもある。これらの不妊手術は、いずれも永久避妊法であるから、術後に妊娠を希望しても、再疎通率や妊娠成立率はきわめて低いものと考えなければならない。
[新井正夫]