日本大百科全書(ニッポニカ) 「中国工商銀行」の意味・わかりやすい解説
中国工商銀行
ちゅうごくこうしょうぎんこう
Industrial and Commercial Bank of China Ltd.
中国の大手商業銀行。中国語では工行、英語ではICBCと略される。国家的重要性をもつ商工業の発展を図る目的で、1984年に中国人民銀行の市中銀行業務を分離して創設。1994年の金融制度改革により国有商業銀行となり、2005年に株式会社化された。
商工業向け流動資金融資および設備の更新・改造投資向け融資を主要業務とする。預金の受入れ、企業向け融資、不動産融資、リース、債券発行のほか、外国為替(かわせ)業務、外貨預金、外貨貸付なども行う。また中央銀行である中国人民銀行や他行から委託された業務も行っている。国営銀行時代の、1996年時点の商業銀行全体に占めるシェアは総資産で58.6%、預金で39.5%と圧倒的で、支店数2386、従業員数約57万人を数える巨大企業であり、大多数の国有企業のメインバンクとなっていた。しかし資金調達先はコストの高い家計定期預金が多いことから財務状況は思わしくなく、国有銀行が抱える問題をもっともよく表す銀行ともなっていた。
2005年10月に国営銀行から株式会社に移行し、2006年10月には香港(ホンコン)証券取引所、上海(シャンハイ)証券取引所に株式公開を実施した。また中国国内の銀行との戦略的提携ももち、四大商業銀行の一角を占めるまでに至る。2018年の総資産は27兆6995億元、預金21兆4089億元、貸出金15兆4199億元、経常収益7241億元、従業員数44万9296人であり、とくに預金総額の規模の大きさが顕著である。
[上川孝夫・佐藤秀樹 2019年5月21日]