中曲(読み)ちゅうきょく

精選版 日本国語大辞典 「中曲」の意味・読み・例文・類語

ちゅう‐きょく【中曲】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 雅楽曲の規模による分類の一つ。大曲と小曲との間にあるもの。唐楽の五常楽・王昭君・越天楽、高麗楽の皇仁庭・狛鉾延喜楽の類。〔教訓抄(1233)〕
  3. 声明(しょうみょう)の曲調の一つ。律曲呂曲との中間に位置し、両者を兼ねそなえるもの。
  4. ( 「心中委曲」の略 ) 心中の細かな事柄
    1. [初出の実例]「向月欲中曲憂〈中曲謂心中委曲也〉、五更暁色入高楼」(出典:羅山先生詩集(1662)二六・月前枕)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「中曲」の意味・わかりやすい解説

中曲
ちゅうきょく

(1) 日本の雅楽の唐楽曲の分類名。大曲,小曲に対する語で,中くらいの規模の曲という意味で用いられている。現在中曲と指定されているのは,延 (のべ) の曲全部と,早 (はや) および早只 (はやただ) の曲の一部であるが,演奏技法のうえでは大曲,中曲,小曲の間に特別の区別は存在せず,また曲を一ぺん奏したときの演奏時間の長短との対応にも,曖昧な点がある。 (2) 声明 (しょうみょう) の理論用語。天台声明真言声明とでやや異なる意味に用いられているが,いずれも音階に関するもので, (りょ) でも (りつ) でもない第3の音階の名ということになっている。しかしながら,これは古典的な理論のうえでのことで,天台,真言両声明とも,その理論と現行演唱とは一致していない。

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世界大百科事典(旧版)内の中曲の言及

【雅楽】より


[楽曲の構成]
 大陸系雅楽曲には1帖(1楽章)で1曲をなすものと,数帖で1曲をなす多楽章形式のものとがある。また,曲の規模と格とによって〈大曲〉〈中曲〉〈小曲〉といった等級(〈曲品〉という)があり,小曲は多く1帖1曲である。中曲には多楽章形式のものがあり,その基本形式は序・破・急の三部分構成であるが,完備しているもの(例,平調《五常楽》)はまれで,多くは〈破・急〉(壱越調《賀殿》),〈序・破〉(黄鐘調《喜春楽》)のように一部を欠いているか,〈破〉(黄鐘調《西王楽》)または〈急〉(平調《三台塩》)の1帖だけが伝えられている。…

【声明】より

…仏教声楽曲としての声明という語は,広狭2義に用いられる。狭義の声明には,サンスクリット語の音写音,または漢字音による経文中の韻文,つまり偈頌(げじゆ)を歌詞とする大陸伝来系の声明曲(〈梵語讃〉や〈漢語讃〉の類,《如来唄(によらいばい)》《散花(さんげ)》《梵音(ぼんのん)》《錫杖(しやくじよう)》など),あるいはその様式に準拠した和製の声明が含まれ,さらに韻文のみならず経文全体に旋律をもつ真言宗の《中曲理趣経(ちゆうきよくりしゆきよう)》や,天台宗の《引声阿弥陀経(いんぜいあみだきよう)》などもこれに含まれる。また漢字音により日本で独自に作られた〈伽陀(かだ)〉類や日本語による〈讃嘆(さんだん)〉類,〈訓伽陀〉類,〈教化(きようけ)〉類なども狭義の声明に準ずるものと認識され,これらを便宜上〈本声明〉と総称することもある。…

※「中曲」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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