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高麗楽 こまがく

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

高麗楽
こまがく

雅楽の一部門。飛鳥時代から平安時代初期にかけて日本に伝来した朝鮮の合奏音楽。「狛楽」とも書く。おそらく,日本への外来音楽の伝来の最初のものと考えられ,新羅,百済,高句麗の三国から前後して伝来したので,当時の音楽をさすときには,三韓楽ともいうが,正しくは三国楽というべきもの。そのうち,高句麗の音楽のみを特に,高麗楽という場合もある。また8世紀には,渤海からも音楽が伝わったとされており,その渤海楽を含めていうこともある。伝来当時はその系統により特有の楽器,音楽,舞であったが,平安時代中期にそれらの日本化したものを統一して高麗楽 (右方) とし,中国系の唐楽 (左方) と対比させた。現行の高麗楽は 24曲で,すべて舞を伴う。伴奏楽器は管楽器の高麗笛,篳篥 (ひちりき) と打楽器の三の鼓,鉦鼓,太鼓で,管弦として演奏されることがほとんどないので,弦楽器はあまり用いない。楽曲は,高麗壱越 (いちこつ) 調,高麗平調 (ひょうぢょう) ,高麗双調 (そうぢょう) のいわゆる高麗三調子のいずれかに属す。高麗楽は,元来,舞楽を主体として伝承されてきたもので,優美な文の舞 (4人あるいは6人) 『延喜楽』など,可憐な童舞 (4,2,1人の場合がある) 『胡蝶』,躍動的な走舞『納曾利 (なそり) 』 (2,1人) などに分類され,舞姿の似た左方の舞と組合わされ,番舞 (つがいまい) として奏演される場合が多い。

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デジタル大辞泉の解説

こま‐がく【高麗楽/×狛楽】

三韓楽の一。高句麗(こうくり)の楽舞で、7世紀以前に日本に伝来。楽器は高麗笛・臥箜篌(ふせくご)・莫目(まくも)を用いた。
雅楽の分類の一。平安初期の楽制改革で、従来の三韓楽と渤海(ぼっかい)楽を合わせて成立。篳篥(ひちりき)高麗笛三の鼓太鼓鉦鼓(しょうこ)を伴奏楽器とし、舞を伴う。右楽(うがく)。→唐楽

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百科事典マイペディアの解説

高麗楽【こまがく】

雅楽の一種別。狛楽とも書く。大陸から伝来したもののうち,朝鮮半島を経由してきたもの。およびそのスタイルにならって日本で新作されたものの総称。輸入当初は,新羅楽,百済楽などのように,さらに細かく分かれていたが後に高麗楽としてまとめられた。
→関連項目右方狛笛三ノ鼓チャンゴ(杖鼓)納曾利舞楽

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世界大百科事典 第2版の解説

こまがく【高麗楽】

日本に定着した朝鮮系統の楽舞で,雅楽の主要種目の一つ。通常は唐楽に対する語として用い,狛楽とも記す。元来は古代の日本に伝来した大陸系諸楽舞のうち,高句麗からのものを高麗楽と称した。この高麗楽は,新羅楽・百済楽とあわせて三韓楽と総称され,現行の高麗楽の母体となったものである。高句麗直伝を意味する〈高麗楽〉の用例は,雅楽寮の記事に多くみられる。それによると使用楽器は横笛,莫牟(まくも)(管楽器の一種),箜篌(くご),鼓などであった。

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大辞林 第三版の解説

こまがく【高麗楽】

右方うほう高麗楽 」に同じ。
古代日本に高句麗こうくりから伝来した楽舞。新羅楽しらぎがく・百済楽くだらがくとともに三韓楽と呼ばれた。のちにに編入。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

高麗楽
こまがく

狛楽とも書く。大陸系の雅楽のうち、中国系の唐楽に対する朝鮮系のもの。唐楽は左方(さほう)の楽、高麗楽は右方(うほう)の楽といい、両者は楽器編成、舞作法、音楽理論など万事にわたって好対照をなす。「番舞(つがいまい)の制」と称し、両者の舞を交互に披露する制もある。高麗楽上演にあたっては、楽器、楽人、舞人楽屋ともに舞台右方に配置され、装束は緑・青系統に統一される。
 楽器は高麗笛、篳篥(ひちりき)と太鼓、鉦鼓(しょうこ)、三ノ鼓(つづみ)で、合奏を主導するのは明確なリズムを奏する三ノ鼓。曲は高麗笛と篳篥が比較的断片的な旋律を反復してなる。調子は高麗壱越調(いちこつちょう)・同平調(ひょうじょう)・同双調(そうじょう)の3種だが、高麗笛が竜笛より短いため、唐楽における同名の調子よりそれぞれ長2度ずつ高い。拍子は高麗四拍子・唐(から)拍子・揚(あげ)拍子の3種で、唐楽に比して簡素で力強い。
 元来、「三韓楽(さんかんがく)」と称する新羅(しらぎ)・百済(くだら)・高句麗(こうくり)のものを称したが、平安中期に大規模な楽制改革が行われて、朝鮮伝来の三韓楽を母体に、唐の俗楽や、胡楽(こがく)、渤海楽(ぼっかいがく)、その他日本で作曲作舞されたものが整理統合され、左方唐楽に対する右方高麗楽として再編成された。以後これが現在まで継承される。「管絃(かんげん)」の演奏形式もあったが廃絶し、現在では舞楽のみ。『胡蝶(こちょう)』『納曽利(なそり)』『八仙』など約25曲ある。なお、三韓楽の一つとしての高麗楽は天武(てんむ)天皇12年(683)正月18日、新羅楽・百済楽とともに初演され、雅楽寮で教習されたとの記録もあるが、その音楽内容は不明である。[橋本曜子]

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世界大百科事典内の高麗楽の言及

【右方】より

…一般に仁明朝の〈楽制改革〉と称されている雅楽再編成の重要なポイントである。宮廷における左右の扱いと同様,優勢であった中国系統の唐楽は左方に,朝鮮系統の高麗(こま)楽は右方に配され,宮廷行事などでは舞楽が左右一対で演奏された。近衛府における相撲,賭射,競馬などの左右の勝負の際には,勝者をたたえて左方と右方いずれかの舞楽を演奏する習慣があった。…

【右舞】より

…一般には仁明朝の〈楽制改革〉と称されているが,この左右両部制の成立によって,今日に至る舞楽伝承の基礎が完成された。左舞は唐楽を伴奏とし,右舞は高麗(こま)楽を伴奏とするが,例外については後述する。舞台芸術としての舞楽の演出には左右の対比とバランスが重視されており,王朝の美学の反映がうかがえる。…

【雅楽】より

…狭義には,このうち(1)のみをさして〈雅楽〉というが,これは唐時代の大陸の宮廷俗楽(宴饗楽)を取り入れたものであり,儒教的礼楽思想にもとづいた正楽としての〈雅楽〉ではない。 (1)の大陸系鑑賞芸能には,中国系の楽舞を中心とする〈唐楽(とうがく)〉と朝鮮系の楽舞を中心とする〈高麗楽(こまがく)〉とがあり,唐楽の舞を〈左舞〉または〈左方の舞〉,高麗楽の舞を〈右舞〉または〈右方の舞〉という。例外的に《陪臚(ばいろ)》《還城楽(げんじようらく)》《抜頭(ばとう)》の3曲は,曲籍は唐楽であるが右方に配されることがある(〈後出表3-現行舞楽曲・管絃曲曲名一覧〉参照)。…

【三韓楽】より

…日本に伝えられた朝鮮半島3国(新羅,百済,高句麗)の楽舞。それぞれ新羅楽,百済楽,高麗楽(こまがく)という。伝来の経緯は定かでないが,《日本書紀》は允恭天皇の葬礼に際して新羅王が楽人80名を遣わしたと伝える。…

【篳篥∥觱篥】より

…当時,大篳篥と小篳篥の2種類があったが,前者は平安時代中ごろに廃絶し,その後は篳篥といえば,もっぱら後者を指すようになった。奈良時代には唐楽専用の楽器として用いられたが,旋律を自由に吹けることから,平安時代には高麗楽(こまがく)や,宮中の神事用の音楽にも使用されるようになった。現在では重要な旋律楽器として,雅楽のあらゆる種目に用いられる。…

【舞楽】より

…このような外来楽舞の全盛期は,おそらく752年(天平勝宝4)の東大寺大仏開眼供養あたりであったろう。9世紀初頭までに伝わった外来楽舞としては,唐楽,高麗楽,百済楽,新羅楽,度羅楽(とらがく),林邑楽(りんゆうがく),呉の伎楽などが知られ,このほか渤海楽(ぼつかいがく)の記事もある。 9世紀の半ばごろから,これら外来音楽の内容を取捨整備し,あわせて日本人の好みに合った音楽へ改変する,いわば外来音楽の国風化の気運が高まった。…

【舞楽装束】より

…頭装は,精好紗に黒漆をかけ下部を白布で縁どりした〈揉立烏帽子(もみたてえぼし)〉で,履物はふつう牛革を黒漆で塗り固めた浅い形の〈烏皮沓(うひぐつ∥くりかわくつ)〉を用いる。
[舞楽装束]
 唐楽(とうがく),高麗楽(こまがく)等,外国から伝承した舞楽に用いる装束の総称で,襲(かさね)装束(別名唐(とう)装束,常(つね)装束とも),蛮絵(ばんえ)装束,別装束,童(わらべ∥わらわ)装束の4種があり,それぞれに左方(さほう)(唐楽系),右方(うほう)(高麗楽系)の別があって,左方はおもに赤系統の色,右方は青・緑系統の色のものが多い。(1)襲装束 中国唐代の遺制と思われるもので,舞楽の大半はこの装束を使用している。…

※「高麗楽」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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