日本大百科全書(ニッポニカ) 「中継放送局」の意味・わかりやすい解説
中継放送局
ちゅうけいほうそうきょく
relay broadcasting station
他局で制作された番組を有線、無線などの回線を通して信号として受け取り、これを放送するだけの放送局。中継局ともいわれ、自局で番組を制作することはない。中継放送局は中波放送、短波放送、FM放送、テレビ放送のいずれにもあり、サービスエリアや地形、伝送する信号の種類などに応じて種々の形式がある。放送衛星も中継放送局の一種ということができる。
テレビ放送の場合、大電力で送信する親局のサービスエリア周辺に設置される中継放送局をサテライト局とよぶことがある。一般に山頂など電波障害が少なく電界強度も十分強い地点で受信し、その信号を増幅したのち、ケーブルで別の送信地点まで導いて、親局と異なるチャンネルに変換して放送する。しかし、地理的条件によっては受信点と送信点が同一場所となる場合もある。また、親局の電波を受信増幅したのち、親局と同一チャンネルで再送信する場合もある。このような局はブースター局とよばれ、チャンネル節約という点では望ましいが、発射した電波が自局の受信機に入ってくることになると発振をおこす危険があるため、送信の偏波面を親局のそれと変えたり、受信、送信間が山などで十分分離できる場所で採用したりしている。このような中継放送局は、交通不便な山や丘陵地などに設置されることが多いので、十分な保守点検が行えない。したがって、すべての設備には温度、湿度、塩害、塵埃(じんあい)、雪、雷など種々の環境条件に耐える高い信頼性が要求される。テレビの中継放送局には数百ワットの比較的大きな電力のものから、数百世帯以下をサービスエリアとする100ミリワットの微小電力テレビジョン放送局(ミニサテライト局)まで、種々のものがある。地上デジタルテレビ放送では、難視聴地域の発生を防ぐため、膨大な数のUHF中継放送局が日本全国に設置されている。
[木村 敏・金木利之・吉川昭吉郎]