日本大百科全書(ニッポニカ) 「中間的就労」の意味・わかりやすい解説
中間的就労
ちゅうかんてきしゅうろう
一般的な職業にすぐにはつけない人々に対し、生活保護費などを支給しながら、自立した日常生活や社会参加ができるように支援する就労訓練。福祉(生活保護)と労働(一般的就労)の中間的領域に位置し、働くための準備にあたることから、こうよばれる。中間就労、福祉的就労、半福祉半就労、支援つき就労などともいう。日本では、急増する生活保護費の抑制策の一つとして、生活保護受給者を社会復帰させ、普通に働けるようにする制度として関心を集めるようになった。北海道釧路(くしろ)市が2006年度(平成18)から国の補助を受け、生活保護受給者にいくつかの中間的就労の場を用意したほか、京都市も2013年1月に中間的就労の拠点を開設した。
中間的就労は、本人や家族の失業、疾病、障害、いじめ、家庭内暴力・虐待、引きこもりなどさまざまな要因から、長期失業、ニート、ホームレスなどに陥った人々を対象とする。生活保護費のほか、食事、賃金、交通費などを提供し、ボランティアなどの就労体験のほか、公園や福祉施設の清掃、リサイクル作業、農作業などの軽作業に従事してもらう。こうしたさまざまな就労機会を提供することで、段階的に生活のリズムを身につけ、社会とのつながりを取り戻し、一般就労に必要な社会的能力や知識の習得を促す。地方自治体がNPO(非営利組織)、社会福祉法人、営利企業(社会的企業)と連携し、中間的就労拠点や機会を提供するのが一般的である。生活困窮者を安価な単純労働力として使う「貧困ビジネス」に陥らないよう、地方自治体への専用相談窓口の開設や、公的認証制度、就労内容・報酬のチェック制度の導入が不可欠とされる。
海外では、イギリス、フランス、スウェーデン、オランダなどのヨーロッパ諸国やアメリカなどが、疾病や障害のある人々に「支援つき就労」策を提供している。
[編集部]