NPO(読み)えぬぴーおー

日本大百科全書(ニッポニカ) 「NPO」の意味・わかりやすい解説

NPO
えぬぴーおー

Non Profit Organizationの略語で、民間非営利組織を意味する。非営利すなわち営利を目的とせず公益的な市民活動を行う民間団体総称である。アメリカにおいては、組織が意思決定機関をもち、一定の規約に基づいて活動しているという「形式性」、政府から独立した存在である「非政府性」、収益がすべてその組織の活動に再投資されるという「非営利性」、がその要件とされている。ただ、法人格を取得するための法的要件や税制上の扱いは国によって異なり、明確な要件が規定されていない国も少なくない。NPOの活動領域は、医療・福祉、国際協力・交流、環境、文化・芸術、スポーツ、教育、まちづくり人権・平和、災害救援など多方面に広がり活発化している。NPO活動に伴う雇用の発生など、経済的側面からも大きな役割を果たしつつある。

 近年、NPOが注目されているのは、1995年(平成7)1月の阪神・淡路大震災に際して活発に行われたボランティア活動が象徴的に示したように、これらの分野において、企業による営利サービスや政府の提供するサービスだけでは社会の多くの人々のニーズにこたえられないことが明らかになるなかで、民間の自立的で公共性を担うサービスの提供が独自の意義をもつことが理解されるようになったからである。公共サービスの供給システムの面からみれば、政府による供給とも市場における営利企業による供給とも異なる供給主体が出現することで、供給主体間の適切な競争と分担関係が成立するようになる。しばしば硬直的ないしは官僚的であるといわれる公共機関や、利益優先になりがちな営利企業によるサービス提供のあり方に、刺激を与えることも期待されている。また公共サービスを消費する側からいえば、供給主体が多様化することでサービスの量や質を選択することが可能になる。さらに、サービスを利用することに対する費用の支払いについて税制上の優遇措置がなされるならば、税を払って政府の公共サービスを受けるか、NPOへ費用を払ってそのサービスを受けるかという選択も可能になる。政府供給の非効率性・硬直性と市場供給の営利性の両面を制御することにもなる。企業社会の失敗を是正しつつ同時に行財政システムの改革が求められる今日においては、NPOの活動が豊かな社会を実現するためにますます必要とされるであろう。

 ところで、NPOと似たような組織にNGO(Non Governmental Organization、非政府組織)がある。NGOは、国連憲章第71条のなかで使用されている用語で、政府間の協定によらずに設立された民間団体をさす。だから本来は、NGOとは政府主体の国際会議に出席する民間団体のことで、NPOは国内的な概念で「営利企業」に対する「非営利組織」をさす。しかし近年は「草の根NGO」を自称する団体も多くなり、非営利で非政府という性格を備えた市民団体にも使われるようになった。

 NPO法人として認められている団体は1216で、この時点の申請は1768、不認証5、認証は都道府県知事がするほか、NPOの事務所が二つ以上の都道府県にある場合は経済企画庁長官(2001年より内閣総理大臣)が行う(2000年1月7日現在、経済企画庁調べ、2001年より内閣府所管)。活動内容で多いのが「保健、医療または福祉の増進を図る活動」で、NPO法制定のきっかけとなった阪神・淡路大震災で必要性がいわれた「災害救援活動」は10%にも満たなかった。

[植田和弘]

『碓氷尊、グレン・パオレット編著『環境ジャパン―1999』(1999・ダイヤモンド社)』『ジョン・マコーミック著、石弘之、山口祐司訳『地球環境運動史』(1998・岩波書店)』『田中尚輝著『ボランティアの時代―NPOが社会を変える』(1998・岩波書店)』『本間正明・上野千鶴子著『NPOの可能性―新しい市民活動』(1998・かもがわ出版)』『『災害ボランティアとNPO―アメリカ最前線』(1995・マスコミ情報センター)』

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NPO
エヌピーオー

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