久野久(読み)くのひさし

日本大百科全書(ニッポニカ) 「久野久」の意味・わかりやすい解説

久野久
くのひさし
(1910―1969)

岩石火山学者。1932年(昭和7)東京帝国大学地質学科を卒業し、1939年同大学理学部助教授、1955年教授となり、岩石学を担当した。1936年、丹那断層(たんなだんそう)が伊豆半島北部の東側と西側の土地を1キロメートルもずらしていることを発見し、日本における活断層研究の先駆けとなった。長年にわたって箱根火山の研究を行い、これが三重式火山であることを解明し、詳細な地質図を作成した(1950)。1954年「輝石に関する岩石学的研究」で日本学士院賞受賞。1958年、深発地震面からのマグマの発生機構を考える「久野モデル」を発表。主著に『火山および火山岩』(1954)がある。

[藤井陽一郎]

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「久野久」の解説

久野久 くの-ひさし

1910-1969 昭和時代の岩石学者。
明治43年1月7日生まれ。昭和30年東大教授。箱根火山の成因など,火山現象と火山岩研究で知られる。「輝石に関する岩石学上の研究」で29年学士院賞。日本地質学会会長,国際火山学会会長。日本地質学会会長,国際火山学会会長。昭和44年8月6日死去。59歳。東京出身。東京帝大卒。著作に「火山及び火山岩」。

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世界大百科事典(旧版)内の久野久の言及

【結晶分化作用】より

…カンラン石玄武岩マグマと呼ばれる本源マグマからはアルカリ岩の系列(玄武岩―粗面安山岩―粗面岩―アルカリ流紋岩)が生じ,ソレアイト質マグマと呼ばれる本源マグマからはソレアイト系列の岩石とカルクアルカリ岩の系列(玄武岩―安山岩―デイサイト―流紋岩)とが生ずる。そのほか1960年に久野久(1910‐69)は本源マグマとして高アルミナ玄武岩マグマを提唱し,これから高アルミナ玄武岩系列の火山岩が生ずると主張した。その後,中央海嶺から噴き出し大洋底全体に広がる深海性ソレアイトabyssal tholeiitoがエンゲルA.E.J.Engelらによって発見され,通常のソレアイトにくらべてK2Oに乏しいことも明らかにされた。…

※「久野久」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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