深発地震(読み)シンパツジシン

デジタル大辞泉 「深発地震」の意味・読み・例文・類語

しんぱつ‐じしん〔‐ヂシン〕【深発地震】

震源の深さが300キロより深い所で起こる地震。70キロ以上300キロ未満の深さで起こるものは「やや深発地震」という。→浅発せんぱつ地震

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精選版 日本国語大辞典 「深発地震」の意味・読み・例文・類語

しんぱつ‐じしん‥ヂシン【深発地震】

  1. 〘 名詞 〙 震源が相当深い地震。気象庁では深さ二〇〇キロメートル以上のものをいう。五〇〇キロメートル以上の深い地震は極深発地震と呼ばれる。日本付近での深発地震は三五〇キロメートル付近で起こることが多い。⇔浅発地震。〔百万人の科学(1939)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「深発地震」の意味・わかりやすい解説

深発地震 (しんぱつじしん)

震源の深さが100kmを超えるような深い地震を一般に深発地震と呼ぶ場合が多いが,深さ60kmから300kmまでの地震を“やや深発地震”,300kmより深いものを深発地震と呼んで区別する場合もある。世界で最も深い地震は720km,日本付近では600km程度である。このような地球内部の深い場所に地震が実際に起こっていることを確証したのは,日本の地震学和達清夫である。和達の研究によって,太平洋側から日本列島下に北西-西-南西方向へ傾斜する深発地震面が存在することが初めて明らかとなった。また同時に日本列島内の主要な火山前線が深さ100~150kmの深発地震の等深線とほぼ一致することから火山活動が深発地震活動と密接な関係にあることも示された。

 全世界の深発地震の分布はその後グーテンベルクB.GutenbergとリヒターC.Richterによって詳しく調べられ,またベニオフH.Benioffは深発地震面が島弧の下ですべて海溝付近から島弧下へ傾斜していることを見いだした。このような深発地震面は今日,和達=ベニオフゾーン(帯)の名で呼ばれることが多い。深発地震面はアラスカ-アレウト千島-東北日本-小笠原・マリアナ,琉球,セレベス,スマトラ-ジャワ,ニューギニア-ニューヘブリデス,フィジートンガ,中央アメリカ-ペルー・チリなどの環太平洋地帯のほか,パキスタン北部などにも存在するが,その傾斜,形状,深さ,地震活動の度合は地域によりさまざまである。一方,1967年以後地震波の観測によって,島弧の下には,周囲の上部マントルに比べて地震波の伝搬速度が大きく,かつ減衰の小さい高速度・高Q層と呼ばれる傾斜層(スラブ)が存在し,このスラブの内部に深発地震が発生していることが明らかになった。この事実は今日のプレートテクトニクスを形成する有力な証拠となった。

 現在では深発地震は島弧下に沈み込む海洋プレート(スラブ)の内部で,プレートの沈み込み速度,形状やその内部の物性,温度・圧力などに起因する応力分布状態によって起こると解釈されている。深発地震を起こす主応力としては,圧縮応力と引張り応力の二つの場合があり,地域や深さによって異なるが,いずれの場合も主応力方向は地震面にだいたい平行であることがわかっており,この応力によってプレート内部に断層面を生じて地震が発生する。最近の高精度の微小地震観測によれば,千島-東北-関東の東北日本弧の下やアリューシャン(アレウト)弧の下では,深発地震は海洋プレートの上面付近と中心部に近いほぼ平行する二つの面に沿って発生していることが明らかとなり,二重深発地震面の存在が認められるようになった。この上面と下面で起こる地震のメカニズムには明らかな差が見られ,上面ではプレートの傾斜方向に働く圧縮応力,下面では引張応力によって起こっている。この深発地震の二層構造がなぜ生ずるかについては現在いまだ定説がない。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「深発地震」の意味・わかりやすい解説

深発地震
しんぱつじしん

震源の深さが数十キロメートル以上の地震。60~70キロメートルより深い地震をやや深発地震、300キロメートルより深い地震を深発地震と分ける場合もある。深発地震は沈み込んだプレート(スラブ)の中で発生するもの(スラブ内地震)がほとんどで、弧状列島の海溝側で浅く、大陸側に向かうにつれて深く分布し、海溝から沈み込む海のプレートの形状を表している。もっとも深い地震でも深さ650キロメートル程度である。和達清夫(わだちきよお)は1920年代に深発地震を発見し、1930年代にその分布形状の特徴を明らかにした。深発地震はその震源が深いため、被害が出ることはまれだが、1993年(平成5)の釧路沖地震(震源の深さ100キロメートル、マグニチュード7.5)のように規模が大きい場合には犠牲者を生じることもある。

[島崎邦彦]

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百科事典マイペディア 「深発地震」の意味・わかりやすい解説

深発地震【しんぱつじしん】

震源の深さが60〜100kmより深い地震。50〜60kmより浅いものは浅発地震という。また,深さ60〜300kmの地震をやや深発地震,300km以深のものを深発地震と呼んで区別する場合もある。地理的にみても浅発地震とは著しく異なる分布を示し,ほとんどすべてが環太平洋地震帯で起こっている。深さからみてマントル上層部に起こる地震で,日本列島の下ではその震源が一つの面(和達=ベニオフ帯)に沿って分布し,その震源面が太平洋側から大陸側に近づくにつれ深くなる向きで傾斜している。すなわち,島弧下に沈み込む海洋プレートの内部で,プレートの沈み込む速度,形状やその内部の物性,温度・圧力などに起因する応力分布状態によって深発地震が発生することがわかった。→プレートテクトニクス
→関連項目地震地震学和達清夫

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「深発地震」の意味・わかりやすい解説

深発地震
しんぱつじしん
deep-focus earthquake

震源の深さが 300km以上の地震。地震・気象学者の和達清夫によって 1927年に発見された。発生する地域は,日本列島,カムチャツカ半島,トンガ諸島,フィジー諸島,南アメリカ大陸西岸などのプレートの沈み込み帯にかぎられる(→プレートテクトニクス)。太平洋側から大陸側へ向かって 30°~60°の角度で徐々に深くなる傾斜面上に並んで発生する傾向があり,沈み込んだ海洋プレート内で発生すると考えられる。最も深いもので深さ約 700kmのものが知られる。深さ 70kmくらいから 300kmの間で発生する地震を「やや深発地震」と呼ぶ。

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世界大百科事典(旧版)内の深発地震の言及

【異常震域】より

…ふつうの浅発地震では,地震動は震央の付近でもっとも強く,震央から離れるにつれて弱くなり,遠い地点では人体に感じられない。ところが深発地震では,震央の付近では無感であるのに,数百kmも離れた地域で感じられ,震度3~4に達することもある。このように地震動が異常に強く感じられる地域を異常震域という。…

【結晶構造】より

…このカンラン石は地球内部の主要な構成物質であるので,それで構成されている岩体がなんらかの運動によって上記の物理条件をもつ地球深部(約400km)まで運ばれると,スピネルへの相変化を起こし,そのとき急激に体積が減少することになる。深発地震の原因は一つの可能性としてこのようなカンラン石→スピネルの相変化により誘発されるのではないかと想像されている。このように,幾何学模様で表される結晶構造の研究は,われわれを脅やかす自然の巨大エネルギーとも関連をもっている。…

【地震】より

… 地震には震源がほとんど地表付近のごく浅い地震から,700kmも深い所に起こるものまで,さまざまな深さのものがある。震源の深さが70km(または60km)未満の地震を浅発地震,70km(または60km)以上300km未満をやや深発地震,300km以上を深発地震ということが多い。しかし70kmあるいは300kmの深さを境として地震の性質が急に変わるわけではないので,この分類はまったく便宜的なものである。…

※「深発地震」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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