改訂新版 世界大百科事典 「事業転換」の意味・わかりやすい解説
事業転換 (じぎょうてんかん)
企業が現在営んでいる事業を縮小または廃止して,その代りに他の異なる事業を始めること。事業転換の目的は,現在の事業活動に支障が生じ,将来の見通しも暗いときに,他の有望な事業へ乗り換えることによって活路を見いだすことにある。中小企業は大企業に比べて人材,資金力,情報収集・分析等の点で劣っている場合が多く,事業転換も難しいために,中小企業の事業転換を総合的に支援する措置がとられている。1976年に公布,施行された〈中小企業事業転換対策臨時措置法〉がそれである。本法では四つの要因((1)貿易構造の変化による輸出の減少,輸入の増加,(2)技術革新等による需要の減退,(3)輸出国事情等による原材料の確保難,(4)公害・安全規制の強化)から相当数の中小企業において事業活動に支障を生ずる業種を全国的または地域を限って指定,この指定業種に属する中小企業の事業転換を,資金,税金,雇用対策,情報の収集や調査の面で,国や地方公共団体が支援するものである。
現在の事業は続けながら,企業の安定的な成長性を高めるために,他の事業を始めることは,一般に事業の〈多角化〉〈経営多角化〉といわれる。事業転換において従来の事業を廃止することなく続ける場合は,多角化と同じ内容になるが,多角化には現在の事業の不安定性や先細りを新規事業によって補完するという意味が強いのに対して,事業転換は企業の主たる事業を切り替えるという色彩が濃い点で異なる。
執筆者:下田 雅昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報