日本大百科全書(ニッポニカ) 「二重造影法」の意味・わかりやすい解説
二重造影法
にじゅうぞうえいほう
X線検査のうち、生体の構成成分よりX線透過性の高い陰性造影剤と、低い陽性造影剤を併用する造影検査をいう。食道・胃・十二指腸をはじめとする消化管と関節腔(くう)の造影検査に利用される。
日本で生み出され発展してきた食道・胃・十二指腸の二重造影法は、硫酸バリウムBaSO4と空気を経口的に服用させて行う。消化管の粘膜面に薄く硫酸バリウムを付着させ、空気で消化管を適当に伸展させた状態でX線像を得る方法である。空気はゴム管から送入する方法と、発泡剤を服用させる方法とがあり、前者は空気の量の調節ができるため精密検査に向くが、被検者の苦痛は大きい。直腸・結腸の二重造影法は、肛門(こうもん)よりゴム管を挿入し、硫酸バリウムと空気を圧入して行う。これらの二重造影法では、X線透視下で被検者に体位変換を行わせ、粘膜面の変化を含むさまざまな病変を評価できるX線像が得られるため、長らく胃がんと直腸・結腸がんの検出に貢献してきた。しかし近年は、生検可能な細径ファイバーを装着した内視鏡装置の開発普及により、内視鏡検査が早期の胃がんと直腸・結腸がんの検出の第一選択の検査と考えられるようになっている。関節腔の二重造影法は、空気と水溶性ヨード造影剤を経皮的に腔内に注入し、膝(しつ)内障、関節内遊離体などの診断に用いられる。
[大友 邦 2021年8月20日]