家庭医学館 「人工肝補助療法」の解説
じんこうかんほじょりょうほう【人工肝補助療法】
劇症肝炎は、死亡率の高い疾患で、欧米では肝移植(かんいしょく)が第1選択となってきています。
日本では、まだ肝移植が普及していないため、内科的な治療が積極的に試みられており、徐々によい成績を上げてきています。過去に20%台とされていた救命率も、施設によって60%以上との報告もあります。
劇症肝炎の内科的な治療は、人工肝補助療法で時間を稼(かせ)ぎ、その間に原因の治療をすることが目標です。
人工肝補助療法は、血漿交換法(けっしょうこうかんほう)と血液浄化法が組み合わせて行なわれ、予後が大幅に改善しています。
●血漿交換法
血漿交換(人工透析の「血漿交換法」)とは、患者さんの血液を体外に取り出し、血漿成分を取り除き、その代わりに健康な人の血漿を入れて交換し、肝臓でつくられるたんぱく質であるアルブミンや血液凝固因子(けつえきぎょうこいんし)などの欠乏を補充することを目的とするものです。
新鮮凍結血漿を用いますが、プロトロンビン時間値などを目安にその補充量を調節します。
これで出血傾向などは是正されますが、脳症の改善は期待できません。
●血液浄化法
腎不全(じんふぜん)が合併したり、肝性脳症(かんせいのうしょう)が長引くような場合は、血液濾過透析(けつえきろかとうせき)や持続的血液濾過透析などの血液浄化法が行なわれます(「人工透析」)。
血液濾過透析は、意識障害などの原因と想定される中分子(分子量が1500~5000)や小分子の肝不全にともなう毒性物質を取り除くことなどが目的です。
●その他の補助療法
肝細胞を用いた人工肝によるハイブリッド型バイオ人工肝などが現在開発中であり、人工肝補助装置として期待されています。