他のヒトヘルペスウイルス

内科学 第10版の解説

他のヒトヘルペスウイルス(ウイルス感染症)

(5)他のヒトヘルペスウイルス
a.ヒトヘルペスウイルス6,
ヒトヘルペスウイルス7
概念
 ヒトヘルペスウイルス6(human herpesvirus 6:HHV-6)とヒトヘルペスウイルス7(human herpesvirus7:HHV-7)は遺伝子的にも非常に類似したヘルペスウイルスである.どちらのウイルスも突発性発疹の原因となる.
病因
 HHV-6およびHHV-7は,ヘルペスウイルスβ亜科に属している.ほとんどの成人が感染しており,唾液中にウイルスを排泄している.母体からの移行抗体が消失する時期に,唾液を介した飛沫感染などで感染し突発性発疹を起こす.感染後は終生免疫をもつが,まれに免疫不全により再活性化し,肝機能障害,肺炎,脳炎などの原因となることがある.また近年,重症薬疹の1つである薬剤性過敏症症候群の経過中におけるHHV-6の再活性化が,その症状の再燃や遷延化に関与していることがわかっている.
疫学
 HHV-6による突発性発疹は,生後4カ月から1歳までに好発する.HHV-7は,HHV-6よりも発生する頻度が低く,好発年齢が2~4歳とHHV-6よりも遅い傾向がある.
臨床症状
 HHV-6とHHV-7は,ともに突発性発疹の原因となるが,一般的にHHV-7の方が軽症となることが多く,重篤な合併症も少ないという傾向がある.これには,HHV-7の方が後に感染するため,HHV-6の感染によって獲得した免疫が,類似ウイルスであるHHV-6の増殖抑制に関与している可能性も指摘されている. HHV-6による典型的な突発性発疹は,突然の発熱で発症し,高熱が3~4日間持続する.解熱期に,顔面,体幹部を中心に麻疹様あるいは風疹様の発疹が出現し,数日で色素沈着を残すことなく消退していく.不顕性感染や,発熱だけで発疹を伴わない例,あるいは発疹のみとなる例も多くみられる.発症時にカタル症状はみられず,全身状態も比較的良好なことが多い.氷山斑とよばれる口蓋垂根部に散在する小さな隆起性病変が,発症の初期から出現することがある.
 HHV-7もこれと同様の突発性発疹を発症するが,発熱や発疹が軽症の非典型例が多く認められる.このためHHV-7による発症は,突発性発疹と診断されないことも多いことが推測される. 両者ともに,熱性痙攣,脳炎,肝炎,急性小児片麻痺などの合併症が報告されているが,HHV-6の方が,合併症の種類が多彩で,その発生頻度も高いことがわかっている.
診断
 突発性発疹は,発症年齢や臨床所見の経過より疑われる.しかし,特にHHV-7による軽症例においては,発症年齢も遅れ,症状もごく軽度のことが多いため,臨床症状から疑うことが困難となることも多い.確定診断のための検査には,ウイルス分離などのウイルス学的検査,あるいはIgM抗体の上昇やペア血清での抗体上昇が利用される.
治療
 一般に予後良好で,対症療法のみで約1週間の経過で自然治癒することがほとんどである.まれに,種々の合併症や続発症によって重症化し,ガンシクロビルやホスカルネットなどが治療に使われることがある.
b.ヒトヘルペスウイルス8(human herpesvirus 8:HHV-8)
概念
 HHV-8は悪性腫瘍の発生などに関与するウイルスであり,AIDSに合併したKaposi肉腫からはじめて発見された.その後,Kaposi肉腫以外にも,原発性体腔液性リンパ腫(primary effusion lymphoma:PEL)や多中心性Castleman病(multicentric Castleman’s disease:MCD)のようなリンパ増殖性疾患の発症にも関与することがわかっている.
原因
 ヒトヘルペスウイルス8は悪性腫瘍を起こすウイルスであり,1994年にAIDSに合併したKaposi肉腫から発見されたことから,Kaposi肉腫関連ヘルペスウイルス(Kaposi’s sarcoma-associated herpesvirus:KSHV)とよばれることもある.
疫学
 HHV-8の健常者における抗体保有者の割合は,地域によって異なっていることがわかっている.アフリカの国々では40~50%,地中海沿岸では10%,北米や日本などの他地域では5%程度との報告が多い.HHV-8関連疾患はいずれも,AIDS患者にみられる疾患であり,AIDS以外でこうした疾患をみることはまれである.またAIDS合併Kaposi肉腫患者のほとんどが男性同性愛者であることから,HHV-8による感染が性行為によって広がっていることが推察される.
病態生理
 HHV-8の生体内でのリザーバーはB細胞であり,Kaposi肉腫では血管内皮細胞への感染が起こることで腫瘍化し,原発性体腔液性リンパ腫では感染B細胞が腫瘍化することで発症するとされている.また,多中心性Castleman病においては,HHV-8の急性感染症のような病態にIL-6が過剰産生されることで発症すると考えられている.
臨床症状
 Kaposi肉腫の病変は皮膚に多く認められ,紫紅色から黒褐色の皮疹が全身のいたるところに出現する(図4-4-3).進行すると拡大・増加し,膨隆するものも多くなり,集簇すると四肢や顔面に浮腫を伴うこともある.皮膚以外にも,消化管,肺,肝臓などのさまざまな臓器にKaposi肉腫による病変が発生する.
診断
 腫瘍病変の生検組織による病理診断によって診断される.HHV-8は腫瘍の発生には関与しているが,診断のための必須検査とはなっていない.
治療
 AIDSに合併したKaposi肉腫は,抗HIV薬による多剤併用療法(抗レトロウイルス療法,antiretroviral therapy:ART)の開始によって徐々に改善する傾向があることがわかっている.喉頭部や肺などの重篤な病変,全身皮膚に広がり急速に進行する例や浮腫を伴う例では,リポソーマルドキソルビシンやパクリタキセルによる化学療法などが行われている.[今村顕史]
■文献
片野晴隆:ヒトヘルペスウイルス8のウイルス学.エイズ学会誌,11: 171-178, 2009.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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