生後6カ月~1歳台の小児に好発する、ヒトヘルペスウイルス6あるいは7による急性ウイルス感染症です。
ほとんどの子どもが3歳までに感染するといわれています。感染する時期はヒトヘルペスウイルス6のほうが7よりも早いことが多いため、1度目の突発性発疹は6、2度目は7による感染症のことが多いと考えられます。
38~39℃台の発熱が3、4日続いたのち、解熱とともに全身に発疹が現れます。発疹は2、3日で消失します。発熱と発疹以外に比較的多くみられる症状として下痢があります。
従来、予後良好な疾患といわれていますが、まれに脳炎や肝炎を併発することがあるので、発熱、発疹以外に普段と異なる症状を認めたり全身状態が悪い場合は、早めにかかりつけの小児科を受診することが必要です。
診断は特徴的な臨床症状から行うことがほとんどですが、ヒトヘルペスウイルス6あるいは7の感染を証明するためには、病気の急性期と回復期で採血して抗体が陽性に転じることを確認する、急性期の血液からウイルスを分離する、急性期の血清からPCR法でウイルスの遺伝子(DNA)を証明するなどの方法が用いられています。
区別すべき病気として、エンテロウイルス感染症があります。
対症療法(水分補給、発熱時は冷却や解熱薬の投与、下痢がひどい場合は、整腸薬や
発熱のみで機嫌もよく、全身状態が悪くない場合は、大急ぎで救急外来を受診する必要はありませんが、病気の初めは何による発熱かの判断が家庭ではできないので、かかりつけの小児科を受診することが必要です。
多屋 馨子
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
乳幼児、とくに生後3、4か月から1年半くらいの乳児によくみられる良性の急性伝染病で、小児バラ疹roseola infantumともよばれる。原因は、ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)とされている。潜伏期は10日前後で、急に39~40℃の高熱を出し、約3日間持続する。この間、高熱にしては元気にみえるが不機嫌で、泣いたりよく眠らなかったり、ときにけいれんをおこしたりするほか、嘔吐(おうと)や下痢(1日5、6回で粘液を含む黄緑色の水様便)があったり、のどが赤くなって鼻汁が出ることもある。このため、急性消化不良症やかぜと診断されやすい。発病後3、4日すると急に熱が下がって平熱となり、前述のような症状が速やかに消える。ところが、下熱と同時かやや遅れて発疹が背から始まって、腹、胸、頸(けい)部と続き、ついで四肢に現れる。この発疹は数が多く、やや盛り上がった直径2、3ミリメートルの赤い小斑点(はんてん)で、やがて融合して不規則な形になる。風疹に似ているが、かゆみはほとんどなく、好発部位が躯幹(くかん)で、四肢末端や顔には少ないため、衣類を脱がせたときに気づくことが多い。この発疹も2、3日で消え、皮もむけず痕(あと)も残さないで治る。下熱して発疹が出てから診断される場合が多く、治療としてはとくにない。安静にして対症療法を行う。4、5日でよくなるため、とくに予防については考慮されていない。一度かかれば二度とかからない。
なお、第六病ともよばれるが、これは、イギリスの医師デュークスClement Dukes(1845―1925)がフィラトフ‐デュークスFilatow-Dukes病(しょうこう熱様風疹ともいい、しょうこう熱または風疹の軽症型とみられ、現在では独立疾患として認められていない)を報告したとき、麻疹、しょうこう熱、風疹に次ぐものという意味で第四病と命名したことに始まり、伝染性紅斑(りんご病)を第五病、突発性発疹を第六病とよんだものである。
[柳下徳雄]
乳児ばら疹ともいう。乳幼児の発疹性疾患の一つで,感染症であるが,ウイルスは証明されていない。6ヵ月から1歳までの乳児がほとんどであるが,3歳までの幼児にもまれにみられる。急激に39℃以上の発熱があり,少し不機嫌となり,食欲もやや低下するが,咳や鼻汁などのいわゆる感冒症状はみられない。熱のために痙攣(けいれん)を起こしたり,下痢がみられることがある。3~4日間は高熱が続き,解熱剤の効果も認められないことが多いが,その後,急に解熱して,それと同時か少し前に直径2~3mmの細かい赤い発疹が出現する。発疹は体幹だけのこともあるが,全身に及び2~3日で跡を残さずに消失する。かゆみや痛みはない。治療は解熱剤,熱性痙攣がみられた場合は鎮静・抗痙攣剤,下痢に対しては止痢剤を用いるという対症的なものである。
執筆者:渡辺 言夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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