ウイルス(読み)ういるす

ASCII.jpデジタル用語辞典 「ウイルス」の解説

ウイルス

主にOSやアプリケーションのセキュリティ上の欠陥やバグを突き、コンピューターに何らかの不正な動作を行なわせるプログラム。一般的には、①自分の力で他のホストやファイルへ伝染する「自己伝染機能」、②ホストの中でじっと待つ「潜伏機能」、③条件が整ったら活動を始める「発病機能」の3つのいずれか(またはすべて)を備えた不正プログラムを指す。ウイルスを大まかに分類すると、自己伝染機能を持つ「ワーム」、潜伏機能を持つ「トロイ木馬」、発病機能を持つ「ロジックボム」の3種類に分けられる。そのほかウイルスは、機能や性質によってもいくつかに分類される。古くからある「実行ファイル/ブートレコード感染型ウイルス」や、マクロ言語で記述された「マクロ型ウイルス」、ホストのメモリー内に潜む「メモリー常駐型ウイルス」、メールを感染経路に利用した「メール添付型ウイルス」などが挙げられる。なお、世界初のコンピューターウイルスは、1987年にイスラエルで発見された、VAX用のBrainウイルスといわれている。ただし同ウイルスは、Brain兄弟が経営するソフトウェアハウスが開発したソフトの違法コピーを防ぐ目的で開発された。違法コピーをした場合、製品を購入するように警告を発するというもので、悪質な動作を行なうものではなかった。

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百科事典マイペディア 「ウイルス」の意味・わかりやすい解説

ウイルス

ビールスとも。動物植物細菌放線菌などの生きた細胞に寄生し,細胞内でだけ増殖できる数百nm以下の病原体核酸をもち,自己と同じものを複製するという生物の特性を有するが,細胞外では核タンパク質として結晶するものもある。核酸の種類によりDNAウイルスRNAウイルスに,宿主により動物ウイルス植物ウイルスバクテリオファージ等に分類される。ウイルスはそれ自身代謝系をもたず,ウイルス核酸を鋳型として宿主細胞の代謝系を介して必要な酵素タンパク質を合成し,ウイルス核酸を複製するとともに,核酸をつつむタンパク質ユニットをつくり,それらが集合して新しいウイルスを完成して細胞外に放出する。ウイルスに対して生体がとる防御方法としてはインターフェロンの産生と免疫系の働きがある。癌やエイズなど深刻な感染症を引き起こすが,今のところワクチン療法以外に直接的な特効薬はない。
→関連項目ウイルス病ウイロイドエマージング・ウイルス癌ウイルス逆転写酵素クラミジア腫瘍植物ウイルス病テミン花房秀三郎

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウイルス」の意味・わかりやすい解説

ウイルス
virus

ビールス,あるいは素焼き陶器を通過してしまうことから瀘過性病原体ともいう。細菌よりも小さな生物群で大きさは 10~300nm。増殖には生きている生物の細胞を必要とし,それぞれの種に応じた生物に寄生するので,寄生宿主の種類によって動物ウイルス,植物ウイルス,細菌ウイルス,昆虫ウイルスなどに分けられる。また,特有な病変を起すので,その病名で肝炎ウイルス,インフルエンザウイルス,麻疹ウイルスなどと呼ばれる。ウイルスは化学的には核蛋白がその主体をなし,外殻には核蛋白,内側には遺伝子である核酸を含んでいる。ウイルスの感染性はこの核酸部分にあり,核酸はデオキシリボ核酸(DNA)とリボ核酸(RNA)などがあるので,DNAウイルス,RNAウイルスなどと分類することもある。外形は球形,円筒形,正二十面体などさまざま。治療には一部のウイルスを除いて抗生物質は効かない。

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知恵蔵 「ウイルス」の解説

ウイルス

生物の細胞内だけでしか増殖できない感染性の病原体。細胞構造をもたず、粒子状ないし膜状のコートたんぱく質の内部に1本ないし2本鎖の核酸を遺伝情報としてもち、感染した細胞の核酸合成系・たんぱく質合成系を利用して増殖する。感染する生物に応じて植物ウイルス、動物ウイルス、細菌ウイルス(バクテリオファージ)に、また、核酸の違いに応じて、DNAウイルスとRNAウイルスに分類することができる。レトロウイルスはRNAウイルスの1種であるが、逆転写酵素をもち、RNAから2本鎖DNAを合成して、感染細胞のDNAに組み込むことができる。多くの発がんウイルスのほか、エイズウイルスがこれに当たる。ウイロイドはウイルスよりもさらに単純な構造の病原体で、300〜600塩基対の短い1本鎖の核酸だけからなる。ジャガイモや柑橘類などの矮化を引き起こすものが多い。

(垂水雄二 科学ジャーナリスト / 2007年)

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化学辞典 第2版 「ウイルス」の解説

ウイルス
ウイルス
virus

ビールスともいう.ウイルスはその粒子の大きさが20~30 nm の間にあり,細菌が通れない濾過器を通過する病原体と定義される.この粒子は核酸を中心としてタンパク質の殻(coat protein)で包まれている.そのほか,少量の脂質,炭水化物が含まれるものもある.核酸の量はタンパク質の量に比べて非常に少ないが,ウイルスの核酸はDNAとRNAのどちらかを遺伝物質としてもっており,この核酸が増殖に重要な役割を果たす.これはウイルスから単離した核酸部分だけでウイルス病が起こることによって示された.ウイルスはそれ自体では代謝系をもたず,宿主細胞に感染してはじめて自己増殖を行う.ウイルスは感染する宿主細胞によって,動物ウイルス,植物ウイルス,および細菌ウイルスの3種類に分類される.細菌ウイルスはバクテリオファージともよばれている.

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精選版 日本国語大辞典 「ウイルス」の意味・読み・例文・類語

ウイルス

〘名〙 (Virus 元来ラテン語)⸨ビールス⸩
① 濾過性病原体。細菌濾過器を通過し、電子顕微鏡でないと見られない微粒子。核酸としてDNAかRNAの一方をもち、遺伝物質のみから複製される。大部分はエネルギー生産系を欠き、宿主のリボゾームを蛋白質合成に利用する。寄生する宿主によって動物ウイルス、昆虫ウイルス、植物ウイルス、細菌ウイルスに大別される。天然痘、麻疹、狂犬病、流行性脳炎などのウイルスは、人間に対して病原性をもつ。
※死神の馭者(1956)〈福永武彦〉「僕の病気は何でも現代医学ではまだ原因不明のヴィールスによるものらしく」

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デジタル大辞泉 「ウイルス」の意味・読み・例文・類語

ウイルス(〈ラテン〉virus)

《毒の意》光学顕微鏡では見ることができず、細菌濾過ろか器を通過してしまう病原体。生物と無生物の中間形とされ、大きさは20~300ナノメートル。外殻はたんぱく質からなり、内部に遺伝子のデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)を含む。単独では生命活動を営めず、生きた細胞に寄生して生活・増殖する。濾過性病原体。バイラス。ビールス。
コンピューターウイルス」の略。
[類語](1細菌バクテリア球菌乳酸菌黴菌雑菌病原菌病原体大腸菌サルモネラ菌ピロリ菌ヘリコバクターピロリスピロヘータリケッチア酵母イースト青黴麹黴

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妊娠・子育て用語辞典 「ウイルス」の解説

ういるす【ウイルス】

人や動物の細胞に入り込み(=感染)、自分の細胞を強制的に複製、増殖させる微生物。このため宿主になった人や動物には病気の症状が出てきてしまいます。ウイルスは電子顕微鏡でないと見えないほど小さいサイズです。

出典 母子衛生研究会「赤ちゃん&子育てインフォ」指導/妊娠編:中林正雄(母子愛育会総合母子保健センター所長)、子育て編:渡辺博(帝京大学医学部附属溝口病院小児科科長)妊娠・子育て用語辞典について 情報

情報セキュリティ用語辞典 「ウイルス」の解説

ウイルス

通商産業省告示の「コンピュータウイルス対策基準」によると、自己伝染機能・潜伏機能・発病機能を1つ以上有するプログラムを指す。ワームやトロイの木馬も、広義のウイルスに含まれる。

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農林水産関係用語集 「ウイルス」の解説

ウイルス

インターネット等を介してコンピュータに入り込み、意図的に悪影響を及ぼすように作られたプログラム。悪質なものは、プログラム、データ等のファイルの破壊などを引き起こす。

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DBM用語辞典 「ウイルス」の解説

ウイルス【virus】

明らかに悪意で持って、ネットワーク上に、ばら撒かれるプログラムで、感染したコンピュータのファイルやシステム全体を破壊し、動作不能にしてしまうものもある。

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栄養・生化学辞典 「ウイルス」の解説

ウイルス

 細胞に比べてはるかに小さい生物で,生物としての最小単位と考えられる.動物,植物,細菌いずれにも感染する.

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世界大百科事典 第2版 「ウイルス」の意味・わかりやすい解説

ウイルス【virus】

ビールス,バイラスなどとも発音される。核酸(DNAもしくはRNA)とタンパク質からなる,細菌よりも小さな一群の病原体。遺伝情報を担う核酸がタンパク質の外被におおわれた構造をもち,それぞれのウイルスに特有の宿主となる細菌や生物の細胞に寄生して,宿主のタンパク質合成能やエネルギーを利用して,自己増殖を行う。ウイルスは,その大きさが数十~数百nmときわめて小さく単純であることと,単独では生物としての要件である自己増殖能をもたず,寄生してはじめて自己増殖を行うことから,しばしば〈生物と無生物の間にあるもの〉と表現されることがある。

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パソコンで困ったときに開く本 「ウイルス」の解説

ウイルス

⇨コンピュータ・ウイルス

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IT用語がわかる辞典 「ウイルス」の解説

ウイルス【virus】

「コンピューターウイルス」の略。⇒コンピューターウイルス

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世界大百科事典内のウイルスの言及

【生物】より

…細菌類,菌類などは,主として細胞の形態学的特徴などから,かつては植物として扱われてきたが,もっぱら有機物質に頼るという生き方などは植物的とはいえず,さりとて全体的な様相は動物的でもなく,進化の筋道からみても,動物,植物のいずれかに含めるのは難があるとして,今日では〈第三の生物〉といわれる菌類(菌界Mycota)なるグループが設定されている。 ウイルスが生物であるかどうかは長い間論議の的であったが,ウイルスは自分ではエネルギー転換系をもたず,物質代謝の面は生物の生きた細胞に依存して自己増殖を行うため,現在では生物の範疇(はんちゆう)には含められていない。もともとは生物であったのかもしれないが,他の生物の細胞に〈寄生〉して生きるようになったため,情報のシステムだけが残ってしまったものと考えてもよいだろう。…

【バクテリオファージ】より

ウイルスのうち細菌に感染して増殖するものの総称。略してファージともいう。…

【溶原菌】より

…細菌を宿主とするウイルス(バクテリオファージ,単にファージともいう)には,感染後,細胞内で増殖して宿主を死に至らしめるものと細胞内に潜伏してしまうものがある。後者の場合,ウイルスの遺伝物質(ゲノム)は宿主染色体の一部として組み込まれており,その発現がリプレッサーと呼ばれるタンパク質の働きで大部分抑制されている。…

※「ウイルス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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