改訂新版 世界大百科事典 「代理受領」の意味・わかりやすい解説
代理受領 (だいりじゅりょう)
金融実務において慣行的に行われている債権担保の方法。A(債権者)がB(債務者)に融資するにあたり,その債権を担保する目的で,BのC(第三債務者)に対する債権についてBから取立委任を受けて代理権を取得しておくもので,それに基づいて取り立てて受領した金銭を直接Bに対する債権の弁済に充当できる。これはとくに,戦後の金融難を背景として,中小企業が官公庁に対する工事請負,物品納入により取得する代金債権につき,譲渡,質入れが禁止されていることに代わる担保方法として盛んに行われた。今日では官公庁に対する債権以外にも,例えば工事請負代金債権の多くは譲渡,質入れが禁止されていることもあって,その代理受領による担保化が広く認められている。その形式としては,AB間の取立委任契約を示す〈委任状〉が作成され,Cがこれを承諾した旨の文言を記入し記名押印するというのが通例である。判例・学説は基本的には,債権担保の実質的目的に沿った効力・理論構成をこの制度に対し与えようという方向にあるといえよう。
執筆者:東海林 邦彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報