金銭債権(読み)キンセンサイケン

デジタル大辞泉 「金銭債権」の意味・読み・例文・類語

きんせん‐さいけん【金銭債権】

一定額の金銭の給付を目的とする債権

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精選版 日本国語大辞典 「金銭債権」の意味・読み・例文・類語

きんせん‐さいけん【金銭債権】

  1. 〘 名詞 〙 金銭の支払いを受ける権利を有する債権。
    1. [初出の実例]「金銭債権に付ては」(出典:商法(1899)二八五条)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「金銭債権」の意味・わかりやすい解説

金銭債権
きんせんさいけん

広義には金銭の給付を目的とする債権をいう。通常は一定額の金銭の給付を目的とする債権、すなわち金額債権をさす。各種債権のうちでもっとも代表的なものであると同時に、経済的にも重要な意味をもっている。たとえば、売買契約で買い主が代金を支払うとか、借地人が契約に基づいて地代を支払うとか、金銭貸借で借り主が元本や利息を支払うなど、金銭を支払うべき債務は、日常的にもしばしば発生している。

 金銭債権は、一種種類債権(一定の種類に属する物の一定の給付を目的とする債権)ともいえるが、100万円の債権は100万円の価値(金額)が重要で、1万円札で100枚、5千円札で200枚という通貨の種類は二次的な意義しかもたないから、通常の種類債権とは異なっている。また、展示会などに陳列するための金貨コインなど特定の金銭を貸借するような場合は金銭債権には含まれない。特定の種類の通貨(たとえば1万円紙幣や100ドル紙幣)で支払うという特約のある場合(金種債権とよばれる)でも、その通貨が強制通用力を失ったときには、他の通貨で弁済ができ、履行不能とはならない(民法402条2項・592条)。

 このように、通貨の種類が特定されていない金額だけで示された金銭債権(金額債権)は、強制通用力のある貨幣ならば、任意の種類の貨幣で支払う(弁済する)ことができる(同法402条1項)。

 金銭債権については、債務不履行要件および損害賠償について特則が定められている(同法419条)。すなわち、金銭債権の不履行不可抗力による場合でも債務者に責任があり、債務者が不可抗力によるものであることを証明しても免責されない(同法419条3項)。債権者は不履行によって損害を受けたことを証明する必要がなく請求できる(同法419条2項)。ただし、損害賠償の額については法定利率約定利率が法定利率より高いときは約定利率)による(同法419条1項)。

 なお、金銭債権に関して、民法のほか、利息制限法質屋営業法、「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」、「貸金業法」などが制定されており、債務者の保護が図られている。また、金銭はほぼ恒常的な価値をもっていると考えられるが、急激な貨幣価値の変動の際には、事情変更の原則に基づき債権の内容である名目上の金額を増減する必要が生じる。借家法、借地法などにはこれが取り入れられている。

[川井 健]

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改訂新版 世界大百科事典 「金銭債権」の意味・わかりやすい解説

金銭債権 (きんせんさいけん)

売買契約で買主が代金を支払う,金銭消費貸借で借主が元本や利息を支払う,借地・借家契約で借地人,借家人が地代,家賃を支払うというように,金銭を支払うべき債務(したがって逆の立場からみれば金銭の支払いを請求しうる権利)は,きわめてひんぱんに発生する。これらを総称して,金銭債務,金銭債権ということができる。債権の種類は物権のように法定されていないので,さまざまな債権が存在するが,数多い債権の中でも,金銭債権は最も多く発生する類の債権といえよう。金銭債権は,大きくは金融資本の法的基礎を構成しているし,小さい点では日常生活にひんぱんに生じているのである。

 金銭の支払いは,金銭の給付とも金銭による弁済とも呼ばれる。もっとも,金銭の給付には,封金の寄託や特定貨幣の引渡しという意味も含まれる。しかし,これは特定物債権であって,金銭債権ではない。金銭債務の履行つまり金銭の支払いにあたっては,債務者は,自分の選択によって,どの通貨を給付してもよい(民法401条1項)。しかし,特約または当事者の意思を推測し,特定の通貨たとえば1万円札で支払うべきだとみられるときは,その通貨による(同項但書)。ただし,その通貨が弁済期に強制通用力を失ったときは,他の通貨で弁済しなければならない(402条2項)。また金銭債権については,債務者は不可抗力の抗弁を許されない(419条2項後段)。金銭債務の不履行のときは,債権者は損害を証明する必要がなく賠償の請求ができる(同項前段)。賠償額は法定利率(民事の場合年5分,商事の場合年6分)によるが,当事者間にこれより高い賠償額の予定が決められていれば,それによる(同条1項)。
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百科事典マイペディア 「金銭債権」の意味・わかりやすい解説

金銭債権【きんせんさいけん】

金銭の給付を内容とする債権(民法402条)。金額に重きをおき,特定の貨幣を目的とするものでない。強制通貨で支払われる。その不履行(履行不能はなく,履行遅滞のみ)は,不可抗力による場合でも,債務者に責任があり,またその損害賠償額は法定利息(約定利息のほうが高ければその約定利率)による。金銭給付を目的としない債権も債務不履行により損害賠償請求権としての金銭債権に転化する。債務者保護のために,利息制限法,質屋営業法などが制定されている。
→関連項目仮差押え競売金約款国税徴収法差押え直接強制

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「金銭債権」の意味・わかりやすい解説

金銭債権
きんせんさいけん

一定額の金銭の支払いを目的とする債権 (民法 402条1項前段) 。たとえば売買,賃貸借,金銭消費貸借などの契約により生じる代金,賃料,貸金債権や,不法行為による損害賠償債権などはいずれも原則として金銭債権である。一定額の金銭 (通貨であれば種類は問わない) の支払いで足り,封金の寄託や収集目的での一定種の紙幣の取引の場合など給付目的物の「金銭」が限定される債権とは区別される (402条1項後段) 。金銭債権は典型的な種類債権であり,履行不能はありえない。なお迅速,定型的な取引処理のため,その債務不履行の損害賠償について損害賠償の額を,特約がないかぎり法定利率によるなど,特別の規定が設けられている (419条) 。

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