出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…この乳つけをした人は〈乳つけ親〉といって,生児と仮の親子関係を結ぶ。乳つけ親のほかにも,生児のために産育の各段階に応じて,帯の親,取上げ親,名付親,拾い親など多くの仮親(かりおや)をとる風習があった(親子成り)。七夜の祝には生児の名付けを行い,産婆,実家の母親,仲人の女親,近親等を招いて盛大な共食の祝を行って,生児をこの世のものとして承認する。…
…子ども親族【有地 亨】
[親子の民俗]
日本における親子関係は多様な形式と内容をもっており,実の親子以外に日本人はさまざまなオヤとさまざまなコをもっている。オヤの種類から日本の親子をみれば,実親,義理の親,仮親(親分,親方)の三つがあった。実親は生みの親であり,親子関係の中心的な重要性をもつ親である。…
…親子関係にない者が一定の手続を経て親子関係に類似した関係をとり結ぶことを一般に親子成りといい,親子成りによって成立する関係を仮の親子関係,親分・子分関係,擬制的親子関係,儀礼的親子関係などと一般的によんでいる。また,この関係における親を仮親という。親子成りによって設定されるのは法的な親子関係とは異なるから,養子縁組による養親子関係とは社会的意義が全く異なる。…
…ムラ人が親分を得てその子分となる機会は,人生の通過儀礼の節目ごとに見いだされえた。出生時に頼む〈取上親〉〈名付親〉,また病弱な子を儀礼上いったん捨て子する形をとり,あらかじめ頼んでおいた人に〈拾い親〉になってもらうことによって健康な子になると考える風習もあったが,最も一般的には,成人するとき男は烏帽子親(えぼしおや),女は鉄漿親(かねおや)を頼み,また結婚するときに仲人親を頼むというように,仮親に依存することであった。ムラや生まれ育ったマチを離れ,生家を離れて他のマチの商家や職人の家の家長を親方とすることは,子飼い住込みの丁稚(弟子)奉公人となるときに,その家の子方となることを意味した。…
…捨子は死んで見つかる場合もあるが,基本的には間引きや堕胎と違いその死を望むものではなく,親権や扶養義務を一方的に他人に移す行為であり一種の養子入りの方法ともいえる。かつての子育ては子守親や宿親など多様な仮親(親子成り)の慣行があり,また自家で育てると軟弱になるとして里子や見習奉公に出す習慣もあり,生みの親が全責任を負うものではなかった。また当時の家は労働力としてのもらい子や養子奉公人のみならず住込み奉公人や徒弟などを多数かかえており,捨子を受容する基盤として非親族員を取り込む開放的な〈家〉が存在した。…
※「仮親」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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