仰山慧寂(読み)きょうざんえじゃく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「仰山慧寂」の意味・わかりやすい解説

仰山慧寂
きょうざんえじゃく
(807―883)

中国、唐代の禅僧潙山霊祐(いさんれいゆう)の弟子で、潙仰宗(いぎょうしゅう)の派祖。韶州(しょうしゅう)(広東(カントン)省)懐化県の人。小釈迦(しょうしゃか)といわれた。俗姓は葉氏。15歳で出家を志したが父母に許されず、17歳のとき、左手の2指を断って求法(ぐほう)を誓った。18歳で、吉州(江西(こうせい)省)耽源山(たんげんざん)の真応(しんおう)(慧忠(?―775)の法嗣(ほうし))のもとで出家し、玄旨(げんし)(奥深い仏教の教え)を悟り、円相(禅の第一義を示す手段として描く円形)96種を伝授された。さらに21歳より15年間、潙山霊祐に師事し、大悟してその法を嗣(つ)いだ。その後、王莽山(おうもうざん)(河南省)より大仰山(だいきょうざん)(江西省)に移って禅風の挙揚に努め、得法の弟子10余人を出した。中和3年示寂。世寿77歳。諡号(しごう)は智通(ちつう)禅師。潙仰宗とは、潙山霊祐、仰山慧寂師弟の名をとって宗名としたもので、その宗風の特色は、自己の仏性の開顕に努めるとともに、問答に際して種々の円相を用いたことにある。潙仰宗は中国禅宗五家のうちもっとも早く跡を絶ったが、その理由として考えられることは、潙山、仰山が人里から遠く、地の利を得なかったこと、謹厳な宗風が南地にあわず、円相も容易に普及しなかったことなどがあげられる。

[佐藤達玄 2017年1月19日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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