中国,唐代末期,江南の南昌(江西省)を中心にひろがる禅宗の一派で,臨済,曹洞,雲門,法眼とあわせて五家とよばれる。湖南の潭州潙山にいた霊祐(771-853)と,その弟子の恵寂(えじやく)(807-883)が,のちに袁州の仰山にいたのにより,2人の道場の名をとってよぶもの。霊祐は,百丈をうけ,百丈は馬祖をうけるから,潙仰宗は馬祖にはじまる。唐代中期の新しい禅の,最初の成果の一つとして,日常茶飯の言行のうちに,全仏法の大意を明かす,禅問答の妙を発揮するのであり,とりわけ武宗の廃仏(三武一宗の法難)によって,伝統的な仏教学が衰滅するうちに,最初の新しい運動を起こした功績が評価される。ただし,霊祐の弟子は,恵寂のほかに,香厳智閑や霊雲志勤,径山洪など多士済々で,一挙に開花の傾向をみせるものの,多くは数代でその後継者を絶ち,のちに宋の五祖法演が,〈断碑が古路に横たわるもの〉とするのは,この運動のもつ過渡期の思想の限界をあらわす。歴史的使命を果たしきって,新しいほかの運動の展開を導くと,あとに自己の姿をとどめぬ,この時代の禅の特色を,潙仰宗はもっともよく発揮するといえる。
執筆者:柳田 聖山
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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