会計コンベンション(読み)かいけいこんべんしょん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「会計コンベンション」の意味・わかりやすい解説

会計コンベンション
かいけいこんべんしょん

今日の企業会計前提としている慣習のこと。会計仮定あるいは会計公準ともいい、それなくしては会計が成立しえないものである。今日、広く認められている会計公準には、ギルマンStephen Gilman(1917―1986)がAccounting Concepts of Profit(1939)で提示した企業実体の公準、継続企業の公準、貨幣的評価の公準の三つがある。

 企業実体の公準は、企業を資本の提供者である所有者(株主)から独立した別個の存在と考えるという前提であり、会計上の判断は所有者の立場からではなく、企業の立場から行うことを要請するものである。また、この公準は、形式的には記録計算を行うための会計単位が設定されるという前提である。

 継続企業の公準は、企業が継続しないという反証がない限り、会計上の評価や処理は、企業は継続して存続するという立場から行われるという前提である。今日の企業会計においては資産取得原価を基準にして評価することが原則であるが、継続企業の公準はこれを支えている理論的支柱である。また、この公準は、形式的には企業の活動を一定期間ごとにくぎって(通常は1年)計算を行うという前提である。

 貨幣的評価の公準は、貨幣価値が安定しているという前提である。また、この公準は形式的には会計上の記録や測定および伝達は最終的に貨幣額によって行われるという前提である。

 これらの公準は、現実に行われている企業会計について帰納的に分析することで導き出された基礎的前提であるが、企業会計は社会的、経済的環境によって変化する可能性を有しているので、永久に変わらないものではない。

[万代勝信]

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