会議は踊る(読み)かいぎはおどる(その他表記)Der Kongresstanzt

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「会議は踊る」の意味・わかりやすい解説

会議は踊る
かいぎはおどる
Der Kongress tanzt

ドイツ映画。ウーファ UFA(Universum Film-Aktien Gesellschaft)が 1931年に制作した作品。監督エリック・シャレル,音楽ウェルナー・R.ハイマン,出演リリアン・ハーベイ。1814年のウィーン会議舞台に,ロシア皇帝とウィーン娘とのロマンスを描いた作品。トーキー初期に音楽や歌を多用したオペレッタ映画(→オペレッタ)といわれるものの代表作。『ただ一度だけ』『これこそ天来の楽しみ』などの名歌があり,特にウィーン娘がロシア皇帝に召し出されて,馬車で『ただ一度だけ』を歌いながら行くシークエンスがみごと。町の人たちが手を振り唱和するなかを馬車が進み,それを優れた移動撮影でとらえて,映画史上の名場面となった。(→映画

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「会議は踊る」の意味・わかりやすい解説

会議は踊る
かいぎはおどる
Der Kongresstanzt

ドイツ映画。1931年作品。34年(昭和9)日本公開。製作はエリッヒ・ポマー、監督は舞台演出家エリック・シャレル。ウィーン会議を背景に、ふとしたことで知り合ったロシア皇帝アレクサンドル1世(ウィリー・フリッチュ)と町の手袋屋の売り子クリステル(リリアン・ハーベイ)の淡い恋を描いたシネ・オペレッタ。オーストリア帝国外相メッテルニヒはナポレオン失脚後のヨーロッパの主導権を握るため諸国代表をオペラや舞踏会で骨抜きにしようともくろむが、賢帝と名高いアレクサンドル1世だけは瓜(うり)二つの影武者を巧みに使って会議も恋も忘れない。やがて、「ナポレオン、エルバを脱す」の報が届き、皇帝は慌ただしくクリステルに別れを告げる。

 画面の隅々までウィーン情緒があふれ、ウェルナー・R・ハイマン作曲の主題歌「ただ一度だけ」と「新酒の歌」は一世を風靡(ふうび)した。とくに、皇帝の別荘に招かれたクリステルが途中馬車に揺られながら「ただ一度だけ」を歌う長い移動撮影のシーンは、技巧を尽くしたもので名高い。

[出口丈人]

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デジタル大辞泉プラス 「会議は踊る」の解説

会議は踊る

1931年製作のドイツ映画。原題《Der Kongreß tanzt》。ナポレオン失脚後のウィーン会議を舞台にしたオペレッタ映画。監督:エリック・シャレル、出演:ビリー・フリッチ、リリアン・ハーベイほか。

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世界大百科事典(旧版)内の会議は踊るの言及

【ウィーン会議】より

ナポレオン戦争後,ヨーロッパの政治的再編のためウィーンで開かれた列国会議。会議は1814年9月18日の予備会談から翌15年6月9日の最終議定書の締結まで続いたが,その間全体会議は一度として開かれず,もっぱら大国代表からなる委員会で具体的な詰めが行われ,映画《会議は踊る》の題名に象徴されているように,それは権謀術策を旨とする舞台裏の饗宴外交であった。会議には200人以上の国家の代表が参加し,オーストリア外相メッテルニヒが議長となった。…

【ドイツ映画】より


[トーキー時代――トビス社の設立とパプスト監督の活躍]
 トーキーは,アメリカより約3年遅れて出発したが,まもなくドイツ独自のトーキー・システム〈トビス・クラングフィルムTobis‐Klangfilm式〉が完成され,1929年ころから本格的な製作が始まり,同時に高度なトラスト化が進んでウーファとトビスTobisの二大映画会社が市場を支配した。ワルター・ルットマン監督《世界のメロディ》(1929),ジョゼフ・フォン・スタンバーグ監督《嘆きの天使》(1930),ラング監督《M》(1931),エリック・シャレル監督《会議は踊る》(1931),レオンティーネ・ザガン監督《制服の処女》(1931),ウィリー・フォルスト監督《未完成交響楽》(1933),《たそがれの維納(ウイーン)》(1934)などがつくられ,また反ナチスの監督パプストは反戦映画《西部戦線一九一八年》(1930),資本主義社会の腐敗と偽善を痛烈に描いた《三文オペラ》(1931),労働者の国際的連帯を描いた《炭坑》(1931)などの問題作をつくり,ドイツの〈トーキー芸術〉確立に寄与した。
[ヒトラーと映画]
 1933年に政権を握ったヒトラーは,宣伝相ゲッベルスを通じてドイツ映画のナチス化をはかり,ウーファをナチス支配下の独占的な国策映画会社とし,さらにユダヤ人や自由主義的な映画人を追放して,ドイツ映画をヒトラーの宣伝機関化した(1933年渡米したラングなど,多くの映画作家がこの時期にドイツを離れている)。…

※「会議は踊る」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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