伝音難聴、感音難聴

六訂版 家庭医学大全科 「伝音難聴、感音難聴」の解説

伝音難聴、感音難聴
(耳の病気)

 音は、外耳道から鼓膜(こまく)に達し、鼓膜振動は3つの耳小骨(じしょうこつ)をへて内耳に伝えられます。ここまでの間で何らかの障害が生じると、音がうまく内耳に伝わらなくなり、これを「伝音難聴」といいます。

 一方、内耳に伝えられた音の振動は、内耳のコルチ器という部分にある有毛細胞を振動させ、細胞内の電気的信号に変換されます。これが聞こえの神経に伝達され、さらに脳へと送られて音を感じることができます。内耳以降のレベルに障害が起こって生じる難聴を「感音難聴」と呼びます。

 難聴が、伝音難聴か感音難聴かは聴力検査でわかります。耳にあてた受話器から音を聞いた時の聴力を「気導(きどう)聴力」、耳の後ろに振動子(骨導(こつどう)受話器)をあてて直接頭蓋骨を振動させて測る聴力を「骨導聴力」といいます。

 骨導聴力がよいのに気導聴力が悪ければ、外耳から中耳にかけて異常があると考えられ、伝音難聴と診断されます。骨導聴力と気導聴力が同程度に悪ければ感音難聴と診断され、難聴の原因は内耳以降にあると推定します。

 伝音難聴を起こすのは、耳垢(じこう)の詰まり、鼓膜の穿孔(せんこう)中耳炎滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)急性中耳炎慢性中耳炎中耳真珠腫(ちゅうじしんじゅしゅ))、耳管狭窄症(じかんきょうさくしょう)耳小骨連鎖離断(じしょうこつれんさりだん)耳小骨奇形(じしょうこつきけい)耳硬化症(じこうかしょう)などがありますが、基本的に処置や手術で改善できる難聴といえます。

 感音難聴は内耳性難聴と、それ以降に原因がある後迷路性難聴(こうめいろせいなんちょう)に分けられます。

 内耳性難聴には先天性難聴、騒音性難聴、音響外傷、突発性難聴、メニエール病、聴器毒性薬物中毒、老人性難聴、ウイルス感染症による難聴などがあります。

 後迷路性難聴には聴神経腫瘍(ちょうしんけいしゅよう)(これは内耳性難聴を起こすこともある)、脳血管障害による難聴、脳炎などによる難聴、心因性難聴など多彩な原因があげられます。

 難聴で補聴器を用いる場合、伝音難聴では非常に有効ですが、感音難聴では言葉のわかりやすさに一定の限界があります。詳しくは補聴器の項をご覧ください。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報