私たちの耳には、急性(化膿性)中耳炎がひどくなると、
この時にあいた穴は自然に閉じますが、中耳炎を繰り返したり、治り方が不十分だと、この穴が閉じなくなり慢性(化膿性)中耳炎になります。ですから、急性(化膿性)中耳炎になった時にはしっかりと治療することが大切です。なお一般に、急性中耳炎、慢性中耳炎という場合は、この化膿性中耳炎を指します。
鼓膜にできた
穿孔のため
診断は、鼓膜をよく見ることが第一です。できれば手術用顕微鏡や拡大耳鏡を用いて、よく観察します。うみがあるかどうか、穿孔の大きさ、位置、発赤の有無、肥厚、石灰化などを調べることで、現在の慢性中耳炎の程度、今までどのくらいの炎症があったのかを判断できます。
耳漏の細菌検査を行い、細菌の種類と抗生剤の感受性を判断して適切な抗生剤を使います。急性中耳炎と異なり、黄色ブドウ球菌、
①保存的治療
耳漏をとめて、感染をできるかぎり軽くするのが目的です。外耳道・中耳腔の清掃、
なお、点耳液のなかには耳に毒性をもつアミノ配糖体系抗生剤を含む製剤があるので注意が必要です。
耳漏が一時的にとまってもかぜをひいたり、体調を崩すとまた再発します。また、難聴は手術により鼓膜の穴をふさいで正常鼓膜をつくり、さらに耳小骨の伝音機能を治さなければ改善しません。感染を繰り返している間に難聴は進行し、時にはがんこな耳鳴りに悩まされることもあります。早めに外科的治療を受けることをすすめます。
②外科的治療
通常、手術を行う前には側頭骨ターゲットCTを行います。病変がどこにあるか、耳小骨の変形の有無を知ることができ、手術の必要性、手術方法を判断します。医師に十分説明を聞いてから手術を受けてください。
手術には、大きく分けて2つの方法があります。先ほど説明した中耳機能検査の結果が良好であれば鼓膜形成術を行います。局所麻酔、短期入院での治療が可能で、耳の後ろの皮膚から組織を採取し、生体糊(ヒト血液製剤)で穿孔をふさぎます。最近はさらに簡便な方法として、コラーゲンスポンジを穿孔にはさみこんで治療する治療法も考案されています。
中耳機能検査で難聴が改善しない場合、鼓膜穿孔が大きい場合、炎症が高度の場合には
急性中耳炎の治り具合が悪い時、反復する時はしっかり治しましょう。耳の症状が長引く時は慢性中耳炎になっているかもしれませんから、早めに専門医の治療を受けてください。真珠腫性中耳炎との区別が最も大切です。素人判断は禁物です。
池園 哲郎
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…子どもに多い病気である。 鼓膜に穴(穿孔(せんこう))があって閉じないときは,慢性中耳炎とよばれる。難聴と耳からの排膿(耳漏,みみだれ)がみられるが,痛みはほとんどない。…
※「慢性中耳炎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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