保険薬(読み)ほけんやく

改訂新版 世界大百科事典 「保険薬」の意味・わかりやすい解説

保険薬 (ほけんやく)

健康保険法にもとづく保険制度の範囲で用いられる医薬品。通常,医薬品を服用する場合,薬店,薬局から購入して服用するか,医療機関で医師診察を受けた後,投与されたものを服用する。保険薬は通例,この後者のものをいう。日本では,1961年4月に国民皆保険制度が敷かれ,国民は被用者保険,国民健康保険などいずれかの保険に加入することになった。保険薬は,健康保険法でその性格が規定され,厚生大臣によって種類および価格が決定される。さらに,その医薬品の範囲と保険診療等担当者への支払価格も法令で定められている。この保険薬の購入価格が〈薬価基準〉で,正式には〈使用薬剤の購入価格〉という。以上から保険薬は,〈薬価基準〉に収載されている医薬品と定義づけられるが,広義には診察の際に消毒などの処置のために用いられる医薬品も含まれる。〈薬価基準〉に収載されるためには,医薬品として承認されることが必要で,そのうち,医師,歯科医師がみずから使用したり,その指導監督下で使用することが適切な医薬品が〈薬価基準〉の収載対象となる。

 保険薬の生産額は,保険制度の充実につれて拡大し,全医薬品総生産額の大半を占めるに至っている。また医療費の約30%が医薬品代と推計されている。

 なお,欧米諸国と日本とでは医薬分業の進展度,保険制度に差があることから,保険薬に対する認識は異なるが,prescriptional drugs,legend drugs,ethical drugsなどがこれに該当するものと思われる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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